ChatGPTが登場し、AIが食卓の話題となり、OpenAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)が一躍有名人となってから1年半、「AIゴールドラッシュ」はたけなわだ。この1年間で新旧を問わずテック企業の株価は急騰し、IT業界の大物は資産をいっそう増やし、フォーブスの世界長者番付には十数人の新しいAI億万長者が加わった。
時代の申し子といえるのが、米半導体大手エヌビディア共同創業者のジェンスン・フアンCEOである。同社の株価はこの1年で300%近く上昇し、フアンは初めて世界長者番付の上位20人に(20位で)仲間入りした。
ほかにも複数の企業がAIブームの波に乗った。AIアプリケーション向けサーバーを製造する米スーパー・マイクロ・コンピュータは、昨年1年間で株価を10倍以上伸ばしてS&P500種企業随一の成長をみせ、共同創業者のチャールズ・リャン(梁見後)とサラ・リウ夫妻がビリオネアとなった。
米半導体大手アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)のリサ・スーCEOも、AMDの株価が120%上昇したことで今回ビリオネア入りした。AIに大きく依存するサイバーセキュリティ企業クラウドフレアの株価は86%上昇し、ミシェル・ザトリン最高執行責任者(COO)がビリオネアに加わったほか、マシュー・プリンスCEOは資産を34億ドル(約5200億円)に増やした。
非公開のAI企業も躍進している。スタートアップ企業データベースのクランチベースによると、2023年はベンチャー投資全般が低調だった中で、AIを中核とするスタートアップは500億ドル(約7兆5800億円)近い資金を調達した。
調達額トップは、昨年1月にマイクロソフトから100億ドル(1兆5200億円)の投資を受けると報じられたOpenAIで、同社の企業価値は今や800億ドル(約12兆円)を超えるとされる。アルトマンCEOは同社株を保有していないが、フォーブスはベンチャー投資のネットワークに基づいてビリオネアとみなしている。
AI機能を搭載した生産性向上アプリ、Notion(ノーション)の共同創業者でCEOのアイバン・ザオと、AIロボット企業フィギュアの創業者でCEOのブレット・アドコックも、AIスタートアップの新ビリオネアだ。