マイクロソフトの脅威分析センター(MTAC)は、以前も中国系のSNSアカウントが米国の有権者になりすまし始めていることを指摘したが、新たなレポートで、これらのアカウントが米国で議論を呼ぶ政治問題に注力し始めたことや、ここ数カ月で、世論調査に似た質問(あなたはこの件についてどう思いますか? といった内容のもの)をするようになったと指摘している。
マイクロソフトによれば、この動きは、今年の大統領選挙に向けて、「米国の有権者のどの層がどのような問題や立場を支持し、どの話題が最も議論を呼んでいるのかをより深く理解するための取り組み」である可能性が高いという。
報告書によると、米国やその他の地域で政治的分裂を生み出すためのこの種のオペレーションで、人工知能(AI)を用いるケースが増えているという。マイクロソフトによると、同社がStorm-1376と呼ぶSpamouflage(スパモフラージュ)として知られる中国系のネットワークが、台湾の総統選挙中に、生成AIを用いた誤解を招く音声クリップやミームなどを広めたことが確認できたという。
Storm-1376は、米国においてもさまざまな問題に関する偽情報を拡散しようとしており、その一例としては、2023年に発生したマウイ島の山火事が米国政府の自作自演だったという虚偽の主張が挙げられるとマイクロソフトは述べている。
マイクロソフトはまた、北朝鮮が兵器プログラムの資金源となる暗号資産を盗む努力を、長年続けていることを指摘した。同社が引用した国連のデータによると、北朝鮮のサイバー攻撃者は2017年以降に30億ドル(約4500億円)以上の暗号資産を奪っている。
北朝鮮はまた、米国や韓国、日本からの情報収集のためのサイバー作戦を準備している。マイクロソフトがEmerald Sleet(エメラルドスリート)と呼ぶ北朝鮮の組織は、この作戦にAIを導入しており、同社はこの組織に関連するアカウントを無効にするためにOpenAIと協力していると述べている。
マイクロソフトは以前から、国家の支援を受けたグループがAIを利用してハッキングを効率化している可能性を指摘していた。同社は2月、ロシアや中国などの様々なグループが、ハッキング活動の生産性を高めるためにOpenAIのツールを日常的に使用しているという報告書を発表した。ただし、それらの試みの大半は、単純なタスクへの使用だとされていた。
中国は「米国のでっち上げ」と非難
マイクロソフトのサイバーセキュリティ責任者のトム・バートは、ニューヨーク・タイムズの取材に、「彼らは他の人々と同様に、AIを使って生産性を高めようとしている」と述べていた。米国の敵対勢力は非常に長い間、政治を動かしたり分裂を煽ったりするためにSNSを使ってきた。その最も顕著な例とされるのは、2016年にロシア政府が支援する団体が、その年の大統領選挙候補のドナルド・トランプを後押しするための動きに関与していたとされる問題だ。在米中国大使館のリウ・ペンギュ報道官はフォーブスのEメールに対し、「この報道はそれ自体が偽情報だ」と述べた。同報道官は、大統領選挙は米国の国内問題であると主張し、中国は「不干渉の原則を堅持」しており、中国が米大統領選挙に影響を与えているという主張は「完全にでっち上げだ」と述べた。また、米国は「偽情報の真の温床」であり、しばしば中国に濡れ衣を着せていると非難した。
(forbes.com 原文)