「社会的に孤立した人は強い欲求を抱え、血糖値を急激に上昇させる食物や飲料を摂取する可能性がある。甘い食べ物には社会的排除に伴う苦痛を和らげる鎮痛作用があり、極めて満足感が得られるものでもある」と研究者らは説明している。
「孤独は完全に主観的な状態であり、必ずしも本人が社交的かどうかと関係するものではない」とも指摘する。「心の病が精神的な健康状態に影響を及ぼす場合、長い間社会から孤立している間に受ける負の影響に対抗しようと暴食に走る可能性がある」と説明する。
先行研究では、孤独を感じている人は脳の3つの領域(腹側線条体、島皮質、側坐核)の活性レベルが上がることが明らかになっている。このような変化は、薬物依存症や食物依存症の人でみられているような激しい欲求を引き起こす可能性がある。
孤独と肥満の関連性を掘り下げようと、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校グッドマン・ラスキン・マイクロバイオーム・センターの研究者兼共同ディレクターであるアルパナ・グプタの研究チームは、カリフォルニア州ロサンゼルス在住の女性93人を対象に調査を実施。肥満度を表す体格指数のBMIや食事の嗜好と習慣、社会経済的地位、人種、年齢、民族性などのデータを集めた。対象者は18〜50歳で、59%がメキシコ系、残り41%はフィリピン系の人々だった。
研究チームは参加者にサポート体制と、孤独や社会的孤立を感じているかどうかを尋ね、社会的孤立の度合いが強い人とそうでない人の2つのグループに分けた。そして、食べ物と食べ物でないものの写真を見せながらMRI検査を実施。また、甘いものと塩味のきいたものの写真も見せた。
その結果、孤独や社会的孤立を感じていると自己申告した被験者は体脂肪が多く、低品質の食品を食べていることが明らかになった。また、不健康な食品に対する欲求があり、飲食を制御できなかった経験を持つ傾向にあった。
研究者らは「孤独感は食欲関連の感受性を高め、食べることを促す外部からの刺激に反応しやすくする一方で、行動の制御を難しくし、飲食を促すものに対する脳の処理を変える可能性があることが示された」と指摘している。「社会的孤立と飲食を促すものに対する脳の反応度のつながりを調べたところ、甘い食べ物は塩味の食べ物に比べて、より顕著かつ包括的な影響を及ぼすようだ」との見解も示した。
「社会的に孤立した人の飲食を促すもの、特に甘い食物への反応は、欲求、満足感を得るための摂食意欲の高まり、食物中毒の症状など、摂食行動の悪化と関係がある。こうした脳の反応は社会的孤立と摂食行動、および体脂肪率の増加を結びつけるものとして機能する」と研究者らは付け加えた。
グプタの研究チームは報道資料で、孤独を感じると高カロリーで糖分の多い食品を摂るという悪循環から抜け出す方法のひとつは、まず自分が孤独を経験し、社会的に孤立していると自覚することだと指摘。他者とのつながりを求めることも有効かもしれないが、自分自身を思いやるセルフコンパッションを実践することも解決策になりえるという。
研究結果は米国時間4月4日に米医師会誌『JAMAネットワークオープン』に掲載された。
(forbes.com 原文)