「農業の聖地」から「サウナの聖地」へ
もうひとつ、北海道の十勝地方の進化の動きも見逃せない。ご存じの通り、十勝は農業や畜産が盛んであり、さまざまな食材の産地として日本有数の知名度を誇る。その地域が、ここ数年で全国からサウナ好きが集まる「サウナの聖地化」しつつあるのをご存じだろうか。サウナを売りにした宿泊施設が新たにいくつもできたり、サウナを改装するホテルが増えたりという動きが続いている。これを特に推し進めた仕掛け人が、地元の老舗ホテルグループ「森のスパリゾート北海道ホテル」の林克彦社長である。彼が仕掛けるサウナコンテンツ「AVANTO」を目当てに、極寒の冬場にもかかわらず全国からビジネスリーダーたちが集まるのだ。
このイベント、冬場の凍った湖に穴を開け、そこを水風呂に見立ててサウナに入った後にダイブするというエキセントリックなものなのだが、その限界体験とその後の交流会での出会いなどを求めて、日本中からユニークなことをやっている人たちが押しかけるのだ。私もこのイベントに参加したのだが、地元の人や旅行者などと素敵な出会いがあった。
いずれのケースも、そこでしか味わえない特別な体験や時間を求めて人が集まる仕掛けがハードとソフトの両面から設計されており、何代も続く地元企業のリーダーがそのモメンタムづくりを牽引している。さまざまな地方で、その土地らしいハイレベルなコンテンツを有した街のリメイクが起こっていけば、日本の価値はさらに上がっていくことだろう。
なかやま・りょうたろう◎マクアケ代表取締役社長。サイバーエージェントを経て2013年にマクアケを創業し、アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」をリリース。19年12月東証マザーズに上場した。