日本では、「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律(都市の木造化推進法)」が2021年に施行され、建築における木材の利用が促されている。木材は、森林に生えていたときに吸収した二酸化炭素をそのまま固定するため「炭素の缶詰」とも呼ばれ、脱炭素に貢献するからだ。
現在は、完全木造の高層ビルの建設もほうぼうで進められているが、オフィスビルなどの角形鋼管柱を木の板で囲む木被覆(もくひふく)という、部分的に木造化する方式にも注目が集まっている。問題は、木の耐火性能だ。これまで、木部の燃え方の制御、いわゆる「燃え止まり」を担保するために、石膏ボードなどを組み合わせるのが普通だったが、住友林業は、燃え方の違うカラマツ材とスギ材の二層構成により、木材だけで燃え止まり効果を高めることに成功した。より多くの木材を使うこと、そして石膏ボードの製造時に排出される温室効果ガスの削減が同時に実現される。
また、L字型に分割した木被覆を現場で鋼管柱に取り付ける「被覆留付仕様」という方法で、工場で鋼材と木材を一体化させる従来の「二次接着仕様」と比較して、製造工程の時間と輸送費も削減できる。後から取り付けるので、工事中に木材が汚れたり傷付く心配もない。
住友林業は、木材の利用で「日本の森林の有する多面的機能の持続的発揮」を目指す林野庁の「木づかい運動」(ウッドチェンジ)構想を推進するため、鹿児島県志布志に、国産木材の集積、製材、販売や輸出などを一手に行う木材コンビナートの建設を計画している。こうした取り組みにより、心地いい木造建築が増えるばかりか、国内の林業が活性化し森林が保全され、地球温暖化が阻止できれば言うことはない。
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