被災した小学校にきれいな水を供給し続けた非常用膜ろ過装置の実力

プレスリリースより

非常用に飲み水の備蓄をしている人は多いと思うが、風呂やトイレなど、生活用水もなくては困る。能登半島地震では、さまざまな企業や団体が非常用の浄水器を現地に持ち込み生活用水の支援をしているが、そのひとつ、七尾市立能登島小学校に設置された非常用ろ過装置も大いに活躍した。

能登半島地震の被災直後、能登島小学校の生徒たちは、県営水道の復旧を待ちながら給水車から水を運ぶ日々を送っていた。水が使えるのは休み時間だけ。習字、理科、図工など水を使う授業は行えず、トイレの使用も制限される不便を強いられた。2月中旬になり、東京の総合水事業会社、水ing(すいんぐ)が同校に非常用ろ過装置を設置。近くの農業用水を汲み上げて、きれいな水の供給を開始した。それにより、子どもたちは制限なく水が使えるようになった。断水は3月末に解消し、水ingはろ過装置の撤去を決めたが、生徒たちからは手作りの感謝状が贈られた。

設置された装置は、水ingが独自に開発した「非常用膜ろ過装置」というもの。農業用水路から汲み上げた水を浸漬膜が置かれたタンクに貯め、ろ過された水を機器ユニットに送り、学校の水道配管に供給する。ろ過ポンプと給水ユニットが一体になったコンパクト設計で簡単に設置でき、濁った水をろ過したあとの不純物の除去も容易に行えるという特徴がある。自動運転が可能だが、小学校には監視用のウェブカメラが備えられ、運転状況の確認ができるようにしていた。

水ingは荏原製作所から独立した水事業の専門企業(旧荏原エンジニアリング)。金沢市では下水処理場で発生したメタンガスを利用した発電事業も行っている。また、七尾市では避難所にシャワー設備を設置するなどの支援も実施している。

災害時、こうした装置が近所に設置されると助かるが、普段から、飲み水だけでなく、生活用水の確保も考えておく必要があるだろう。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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