アジア

2024.04.05 09:00

知中派の大物投資家、レイ・ダリオが恐れる中国の「100年に1度の大嵐」

2023年3月、北京で開かれた中国発展フォーラムに出席した米ブリッジウォーター・アソシエイツの創業者、レイ・ダリオ(Lintao Zhang/Getty Images)

中国の「失われた10年」に関する話は、市場も中国政府も普通はもう気に留めないだろう。だが、あのレイ・ダリオが、アジア最大の経済大国の「100年に1度の大嵐」を警告しているとなると、さすがに耳を傾けざるを得まい。

世界最大のヘッジファンド、米ブリッジウォーター・アソシエイツの創業者で大富豪のダリオは、中国やその政策当局者らと長い付き合いがある。中国本土市場への進出を狙っていた彼は、長い時間をかけて中国政府関係者と親密な関係を築いてきた。

中国をあまりに熱烈に支持してきたため、米国では政治家から批判を浴びることもあったほどだ。ブリッジウォーターの内部でも数年前、中国をめぐる立場から、当時のデビッド・マコーミック最高経営責任者(CEO)とのあつれきが生じた。ちなみに、共和党員でジョージ・W・ブッシュ政権で財務次官を務めた経歴もあるマコーミックは、ペンシルベニア州から連邦上院選挙に再び立候補している。

長年、中国に入れ込んできた中国通にして巨額の資金を動かす投資家であるダリオ。その彼が中国経済の悲観的なシナリオに言及し、中国が1990年代の日本と同じ轍を踏むことに警鐘を鳴らすとき、それは注目に値する。ダリオはビジネスSNSの「LinkedIn(リンクトイン)」に投稿した5000ワードほどの論考で、米中の対立が事態をさらに悪化させかねないとも強調している。

「膨大な負債が積み上がり、貧富の格差が開くのと並行して、国内外で大きな権力闘争が生じ、自然界が激変し、テクノロジーの大きな変革が進むとき、『100年に1度の大嵐』が起こる可能性が高まる」とダリオは書く。

ここでダリオは、中国の習近平国家主席が2018年に示した認識を変奏している(編集注:同年10月の党中央委員会全体会議で、世界は「100年に1度の局面の大きな変化」に直面しているとの認識が示された。習はこれ以前、以後にもこの言葉を用いている)。習は当時、中国は景気減速やドナルド・トランプ政権の米国との対立激化に直面していると認めていた。ただ、その後、中国の状況は急激に悪化した。

それは新型コロナウイルス禍の影響のためでもあれば、習政権の規制面での不手際のせいでもあった。たとえば2014年ごろ、習のもとで中国は透明性が高まり、外国の大手投資機関が活動しやすくなると信じていた外国の投資家は、いまはもう中国への熱が冷めてしまっているに違いない。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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