筆者がこれまでも指摘してきたように、テレグラムは米メタが運営する通信アプリ「ワッツアップ」とは似て非なるものだ。アラブ首長国連邦ドバイに拠点を置くロシア人プログラマーのパベル・ドゥロフが開発したテレグラムは、使いやすいメッセージアプリとダークウェブの怪しい境界線上にある。たとえセキュリティー専門家からの警告を無視したとしても、プーチン大統領がこのアプリを脅威と見なすのであれば、注意した方が身のためかもしれない。これは、ロシアの親政府系ニュースサイト「ライフ」がドミトリー・ペスコフ大統領府報道官に行ったインタビューから明らかになった情報だ。
ロシア・モスクワ郊外クラスノゴルスクにあるコンサート会場クロクス・シティー・ホールで先月22日、銃乱射事件が発生し、130人以上が犠牲となった。事件後、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」が犯行声明を出した。逮捕された容疑者はテレグラムを通して勧誘されたと証言しているが、これは驚くには当たらない。非営利組織の「過激派対策プロジェクト(CEP)」によると、ISやアルカイダ、ハマス、ヒズボラといったテロリストや過激派組織は、メンバーの勧誘や資金集め、暴力の扇動、さらにはテロ活動の計画などの目的でテレグラムを使用しているという。
テレグラムについてペスコフ報道官は「技術的な観点から見れば、ユニークで驚異的なこのツールは実際、われわれの世代の目の前で成長してきたが、他方でテロリストの手に渡る道具になりつつあり、テロ目的に使用されている」と指摘。この点について、同アプリを開発したドゥロフが注意を向けるべきだと訴えた。
テレグラムの危険性は多岐にわたる。まず、今回の事例のように、テロや犯罪を組織するために使用されていることだ。実際、武器やマルウェア、その他の脅威の販売窓口となることで、犯罪の一翼を担っている。次に、過激派にプラットフォームを提供することで、ユーザーを過激化させることが挙げられる。さらに一般に関わることだが重大なのは、テレグラムは専門家が保証されていないと指摘する水準のセキュリティーやプライバシーをうたい、7億5000万人を超える膨大なユーザーを欺いていることだ。