1987年、当時の西ドイツのまだ10代の若者が、セスナ172を操縦してモスクワまで飛んでいき、赤の広場に着陸させた出来事を思い出してもいい。ソ連軍の戦闘機2機が一時、セスナのほうへ向かったものの、地上のレーダー要員のひとりは「敵対的でない」と記録し、以後は無視していた。
モスクワの東900kmほどに位置するエラブガの工場に対する今回の攻撃は、ロシア軍の指揮官たちを驚愕させたに違いない。いまのロシアには、ウクライナの前線にいる部隊と、ロシア国内の都市や工場のどちらも守れるほどの数の防空システムはない。在欧米陸軍の司令官を務めたマーク・ハートリング退役中将がいみじくも述べているとおり、「どこもかしこも守ることはできない」のだ。
ウクライナのドローン産業が高度に分散化され、空爆などによって制圧するのが難しいのに対して、ロシアのドローン産業は真逆、つまり集中型の体制になっている。とくに、爆薬を搭載するFPV(一人称視点)ドローンの製造は、政府の支援を受ける1社がほぼ一手に担っている。
したがって、ロシア国内にある数カ所の同じ工場を継続的に攻撃できれば、ウクライナはロシアのドローン生産を細らせ、3年目に入る現在の戦争で重要な優位性を確保できる可能性がある。
(forbes.com 原文)