劣化の早期段階からごく微弱な光を検出できる「ケミルミネッセンスアナライザー」を開発。世の中の安心・安全を支える、新たな測定技術の認知拡大を目指す。
宮城県仙台市に本社を構える東北電子産業は、世界でトップシェアを誇る測定装置を開発・商品化している。それは、人の目には見えないごく微弱な光を感知することで材料の劣化度合いを測定する「ケミルミネッセンスアナライザー(以下、ケミルミ)」だ。
「材料が劣化してひびが入ったり色が変わったりするのは、酸化反応だといわれています。酸化した物質は、化学反応により目に見えない光を出します。酸化を高感度に測れる=劣化を高感度にとらえられるということなのです」と代表取締役社長の山田理恵は語る。
日本分析機器工業会によれば、日本における分析機器の市場は2162億円にものぼる。食品や医療分野からプラスティックまであらゆる材料の酸化劣化を高感度に計測することができる同社のケミルミが提供するのは、社会に安心・安全をもたらす新たな分析手法にほかならない。
装置を開発したのは、創業者で山田の父である佐伯昭雄会長だ。NECの研究者だった佐伯が故郷・仙台に戻り東北電子産業を創業したのは1968年のこと。しかし、73年のオイルショックで経営は苦境に立たされる。ケミルミの開発はそんな不況のさなかのことだった。母校である東北大学の教授から「微弱な人の目に見えない光をとらえる装置をつくりたい」という共同研究の依頼が舞い込む。「中小のものづくり企業であっても、開発しなければ生き残っていけない」。現在では企業理念として掲げる「開発なくして成長なし」をモットーに、佐伯は研究開発に注力した。
完成した装置でどんなものが光るかを調べると、東北大学農学部が古いインスタントラーメンが光ることをつきとめる。麺の表面の油が酸化し、人の目には見えないごく微弱な光が発生するということが明らかになった。ケミルミは80年に販売を開始。「油以外のものも酸化するから光るはず」とさまざまな分野の研究者から測定の依頼が舞い込んだ。サンプルは食品や油から、血液、薬、プラスティック・ゴムまで応用範囲が徐々に広がっていった。