25期中18期赤字。カーレース時代に培った縁を生かし、会社存続の危機を幾度も乗り越えてきた。脱炭素社会の幕開けに、先駆者が追いかけてきた夢はようやく日の目を見るだろう。
今「持続可能な航空燃料」(以下SAF)としても注目を集めるバイオディーゼル燃料(以下BDF)がある。それが、家庭や飲食店で出た天ぷら油などの廃食用油から製造されるというから驚きだ。
「この工場はゼロエミッションで動いています。使用済みの天ぷら油が新しい「C-FUEL(BDF)」になり、分離されたグリセリンはプラントを稼働する燃料として再利用される。廃棄物は一切ありません」
左右に茶畑が広がる起伏の激しい山道を駆け抜けると、京都府宇治田原町の工業団地が見えてくる。その一角にあるレボインターナショナル京都工場のプラントには、日々、全国から集められる廃食用油を満載したタンクローリーが吸い込まれていく。そこで、代表の越川哲也が迎えてくれた。この工場で製造されるBDFは、一日3万ℓ。ブランド名「C-FUEL」としてフレキシブルバッグが積まれたコンテナで港のコンテナ船に運ばれ、うち9割が脱炭素エネルギーマーケットの中心地ヨーロッパへ。
高純度の均一化された新エネルギーを安定的に生み出す廃食用油の再生プラントは、産業廃棄物か家畜の飼料か、河川を汚す原因になっていた「使用済み天ぷら油」を新時代のエネルギーに変える。
越川はいち早くバイオディーゼル燃料に可能性を見いだし、30年前から事業化に向けてまい進してきたが、その道のりは紆余曲折だった。行く手を阻む「事件」が起こるのはまだ事業家としては駆け出しのころである。レボインターナショナルが株式会社として産声を上げる3年前のこと。
使用済み天ぷら油からBDFをつくり出すノウハウを確立した32歳の越川は1996年、深夜型スーパーの経営者H氏(故人)と会社をつくると、翌年、京都市が立ち上げた京都市ベンチャー企業目利き委員会(事務局・公益財団法人京都高度技術研究所)で、Aランクの認定を受けた。審査員には稲盛和夫(1932~2022年)や日本電産(現ニデック会長)の永守重信らそうそうたる名前が並ぶ。京都が誇る経済界の偉人らから「将来有望」のお墨付きを得て、最高の船出となるはずだった。