経済・社会

2024.04.09 13:30

バブルと今。身近に起きた2つの変化

もうひとつ、昭和末期に比べて、構造的に異なる点が女性の活躍である。バブル期の女性管理職はまれで、部長クラスの女性比率はわずか1%、課長でも2%に過ぎなかった。現在は部長が8%、課長は12%である。欧米諸国に比べるとまだまだ低いが、着実に女性の存在感が高まっている。

実は、女性活躍の基盤準備はバブル期に行われていた。1985年に男女雇用機会均等法が成立して女性総合職が登場、91年には育児休業法が制定された。女性「一般職」がお茶入れ、コピー取り、新聞配布を強いられた時代ではあったが、女性の社会進出を期待するムードはあの当時に高まっていたのである。

今や、夫婦揃って仕事につき、育児では夫の積極的なコミットを進めつつ、保育園やシッターさんを頼りにするライフスタイルが当たり前になっている。政府や自治体も支援を強化している。

大いに結構と言いたいところだが、急速な少子化が気になる。育児、家事という「家庭業」が軽視され過ぎているのではないか。家庭業はGDPにも現れず、「仕事」と認知されない。昭和時代に「3食昼寝付き」などと流布されたせいか、どれほどの激務であるか、があまり認識されていない。特に中高年男性の多くは意識が低い。少子化の大きな原因は、制度的な支援だけでは家庭業を補いきれない点にある。しかも子供は生き物だ。たまごっちのようにリセットできる存在ではない。家庭業を正面から認知しないと少子化は止められないだろう。

女性の社会進出の手段としての子育て支援という視点ばかりではなく、自然体で出産・育児が可能になるような、家庭業と「仕事」との位置付けの再確認が必要である。もちろん、家庭業の担い手が妻中心であろうが夫が主であろうが、両者等分であろうが構わない。それは夫婦が決めることである。


川村雄介◎一般社団法人グローカル政策研究所代表理事。1953年、神奈川県生まれ。長崎大学経済学部教授、大和総研副理事長を経て、現職。東京大学工学部アドバイザリー・ボードを兼務。

文=川村雄介

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年5月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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