「S&P 500で最悪」に沈んだテスラの株価は復活できるのか?

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2024年の好調な株式市場から取り残されたテスラは、高まるプレッシャーに直面している。ファクトセットのデータによれば、年初来で29%も株価を下げたテスラのリターンはボーイングを3%下回り、S&P500種構成銘柄の中で最もパフォーマンスの悪い企業となっている。

テスラの不振は、S&Pが過去5年で最高の第1四半期を記録し、3つの主要株価指数がすべて最高記録を更新する中で起こっており、投資家やアナリストは同社の成長予測を見直している。

テスラの1月の決算報告は、四半期利益が前年同期から40%も減少し、売上高も3%増と予想を下回った。これは、長らく利益率の高さと成長力を称賛されてきた同社が、猛烈な成長痛に苦しんでいることを示している。

そしてアナリストたちは、今月のテスラの第1四半期決算で、さらなる懸念材料が明らかになると予想している。第1四半期の販売台数の平均予想は45万7000台で、前年同期を8%上回るが、成長率は2019年以降で最も低く、1株当たり利益は0.60ドルと予想され、テスラにとって2022年第2四半期以降で最も収益性の低い四半期になる見通しだ。

テスラの売上高と利益の失速は、利払いの増加や米国と欧州におけるEV需要の低迷などの複数の要因に起因するが、同社の収益の約5分の1を占める中国での減速予測ほど重要なものはないだろう。長年テスラを楽観視してきたダン・アイブスは先日の顧客向けメモで、中国の「非常に軟調」な需要は、伸び悩みと「マージンの圧縮」と相まって「テスラにとって悪夢の四半期」となると述べていた。

バーンスタインのアナリストのトニー・サコナギは、テスラの株価が以前は、実際の業績よりもマスクの物議を醸す言動で頻繁に変動してきたが、直近ではファンダメンタルズの悪化によって下落していると述べている。サコナギは、テスラをカバーするアナリストの中で最も弱気な1人で、テスラのバリュエーションが同業他社と比べてほとんどすべての指標で高いままであり、一般的に高い評価を受ける他のハイテク企業と比べても「割高に見える」と指摘した。ファクトセットのデータによると、テスラの株価収益率の56.4は、ゼネラル・モーターズの約10倍となっている。

フォーブスは、マスクの保有資産が2024年の年初から551億ドル(約8兆3000億円)減少したと試算している。世界トップの富豪だった彼は、3月29日時点でベルナール・アルノーとジェフ・ベゾスに次ぐ3位に転落している。

世界的なEV需要の低迷は、世界的な経済情勢の緊迫化にともなう消費者のコスト意識に関連している。EVは、ガソリン車よりも平均的に高価なままであり、ガソリン車からの乗り換えを促す政府の補助金の減少や自動車ローン金利の上昇によってEV需要はさらに鈍化している。

テスラの時価総額は2021年末から2022年初めにかけて1兆ドル超のピークを迎えたが、それ以降の市場環境の悪化と、マスクが現在Xとして知られるツイッターを買収し、物議を醸したことに絡んだ投資家の動揺により、株価は75%も暴落した。2024年は、テスラの競合のEVメーカーも株価の下落に襲われ、米国のRivian(リビアン)と中国のNIOはともに年初から約50%も株価を暴落させた。また、Fisker(フィスカー)は、2021年3月に時価総額が80億ドルを記録してから3年足らずで倒産の危機に瀕している。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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