だが、ようやく砲弾がウクライナに届く。しかも大量にだ。そしてウクライナは大砲の再稼働に向けて準備を整えつつある。まず取りかかるのは、大半が米国から供与された数十門のけん引式榴弾(りゅうだん)砲M777の修理だ。ウクライナはようやくM777を国産の部品を使って自国で修理ができるようになった。
ウクライナ軍の総司令官に就任したばかりのオレクサンドル・シルスキーは「これらの部品の一部をここウクライナで生産する体制を確立した」「特に、この榴弾砲の各装置を修理する際には、ウクライナ軍の必要に応じて国内企業が製造した部品やスペアパーツの40%が使用される」と語った。
これは重要なことだ。損傷した外国製の兵器を修理のために他国に送ると、その兵器がウクライナに戻ってくるには時間を要し、場合によっては何カ月もかかる。例を挙げると、ウクライナ軍の旅団にレオパルト2戦車が足りないのは、外国の車両基地で修理に手間取っているためだ。
M777を国外に送ったり、外国製部品の到着を待ったりするのではなくに、さらに悪いことに損傷した複数のM777から部品を取り出して別の破損したM777を修理するのではなく、国産の部品を使って国内で修理することで、ウクライナ軍はより多くのM777をより長く使えるようにしている。
ウクライナは、米国を含む同盟国から少なくとも190門のM777を手に入れた。砲員5人で操作する重量5トンのM777は、2023年までにウクライナ軍が運用する大砲で最良かつ最も重要なものとなった。M777は重さ45kgの155mm砲弾をロケットモーターの助けを借りずに約29km先に撃ち込むことができる。同軍のある砲手は米国支援の放送局ラジオ・フリー・ヨーロッパに「(最良なものである)理由は正確さだ」と語った。
2年1カ月におよぶ激戦で、ロシア軍は主にドローン(無人機)と対砲兵射撃でウクライナ軍のM777を44門を破壊し、38門を損傷させた。その結果、ウクライナ軍が前線に配備しているM777の数はほぼ半減した。