欧州

2024.03.31

クリミアのロシア航空部隊、Su-27戦闘機を立て続けに2機失う

ロシア空軍のSu-27SM戦闘機。2015年6月、モスクワ郊外のクビンカで (Fasttailwind/Shutterstock.com)

ロシアがウクライナに侵攻して2年1カ月あまり、ロシア軍の第38戦闘機航空連隊はこれまでかなり幸運だったといえる。

第38航空連隊の拠点は、ロシア占領下のクリミア・セバストポリ近郊にあるベルベク空軍基地だ。セバストポリはウクライナ南部の前線から240kmしか離れておらず、一帯は頻繁にウクライナ側の攻撃にさらされてきた。にもかかわらず、この基地から発進する同連隊のスホーイSu-27戦闘機は大きな被害を免れていた。

それが劇的なかたちで終わりを告げた。同連隊には2021年時点で、1980~90年代に製造されたSu-27PとSu-27SMが計25機ほど配備されていたが、ここ1週間でこれを2機失った可能性がある。うち1機の損失は、自軍の過失によるものだったもようだ。

ウクライナ軍が23日夜に行った大規模なミサイル攻撃では、ロシア海軍の艦艇4隻と通信拠点に加え、ベルベク空軍基地にも被害が出た。ウクライナのシンクタンクである防衛戦略センター(CDS)によると、ウクライナ軍は英国製のストームシャドー巡航ミサイルと国産のネプチューン巡航ミサイルを計40発発射し、一部が第38航空連隊の施設に命中した。

その結果、「Su-27戦闘機1機が破壊され、他2機が損傷した」とCDSは報告している

事実と確認されれば、ロシア軍にとってこの戦争で初めてのSu-27損失となる。最近までSu-27が失われなかったのには理由がある。ロシア軍はSu-30戦闘機やSu-34戦闘爆撃機、Su-35戦闘機をウクライナ攻撃に送る一方、Su-27は戦闘から遠ざけてきたからだ。

第38航空連隊がこれまで最も大きな注目を浴びたのは、2023年3月、黒海上空の国際空域を哨戒飛行していた米空軍の無人攻撃機MQ-9リーパーを迎撃するためSu-27を出撃させた時だった。Su-27はリーパーに燃料を浴びせかけたあと、どうやら誤ってリーパーと衝突したらしい。リーパーは墜落したが、Su-27のほうは無事着陸した。

第38航空連隊はセバストポリ上空で哨戒飛行任務を続けてきた。黒海艦隊のクリミア最大の停泊地セバストポリに対して、ウクライナ側が頻繁に行っているミサイル攻撃に備えたものとみられるが、攻撃の阻止には明らかに失敗している。ウクライナ側は、ミサイルや自爆型の水上ドローン(無人艇)によって、黒海艦隊が当初運用していた艦艇35隻ほどのうち12隻超を攻撃している。

ウクライナ軍によるミサイル攻撃で、ロシア側の地対空ミサイル部隊が神経質になっているのも明らかだ。クリミアに配備されている地対空ミサイルシステム自体、ミサイル攻撃の最重要目標になっている。そのせいか、防空部隊は28日かその前日に、ベルベク空軍基地から発進した第38航空連隊所属のSu-27に誤ってミサイルを発射してしまった。

ソーシャルメディアで共有された映像には、Su-27が炎を上げ、ゆっくりと回転しながら海へ墜落していく様子が克明に捉えられている。パイロットは脱出し、助かったと伝わる。それでも、オランダのOSINT(オープンソース・インテリジェンス)分析サイト、オリックス(Oryx)のアナリストであるヤクプ・ヤノフスキーは「ウクライナ国防省はロシア軍のSAM(地対空ミサイル)の運用者にも勲章を与えるようにすべきだ」と皮肉を投稿した

ロシア側はSu-27の損失を補うのに苦慮するかもしれない。ロシアの航空戦力では、より新しい機種であるSu-30やSu-34、Su-35が主流になっているため、ノーマルのSu-27は40機ほどしか残っていない。そして、保管されている古いSu-27はどれも、かなり腐食が進んでいると報じられている。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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