「世界で最も幸福な国」から米国が初めて脱落 世代間格差も顕著に

Andy Soloman/UCG/Universal Images Group via Getty Images

米国はもはや世界で最も幸福な国の1つではない──。米調査会社ギャラップが最近発表した「世界幸福度報告書」で、米国は前年から順位を8段階下げて23位となった。同社が12年前に「世界で最も幸福な国」ランキングの発表を開始して以来、米国が上位20カ国に入らなかったのは初めて。

「世界幸福度報告書」は、国民1人当たりの国内総生産(GDP)や社会保障、健康寿命を含む6つの側面から各国の幸福度を測定している。調査開始から12年間で、地域や年齢層による幸福度の格差は世界全体で20%以上広がった。

今回の調査では、特に米国の若年層の幸福度の低下が浮き彫りとなった。この層は友人や家族からの支援が不足していると感じているほか、人生の選択肢が少なく、ストレスが多く、現在の生活環境に満足していないと回答した割合が大きかった。

一方、60歳以上の米国人は若年層に比べて幸福度が高かった。実際、60歳以上に限定すると、米国は幸福度ランキングで上位10カ国に入っている。特に健康で経済的に安定し、社会とのつながりが強い人ほど幸福だと回答した。

北欧諸国は強力な社会保障と生活水準の高さで、幸福度ランキングの上位を維持している。デンマーク、アイスランド、スウェーデン、ノルウェーと、北欧諸国は軒並み幸福度の高い上位10カ国に入っており、フィンランドは世界で最も幸せな国に選ばれた。経済協力開発機構(OECD)によれば、フィンランドは教育の質やワークライフバランス、自然環境、社会とのつながり、安全性、生活満足度で高く評価されている。

幸福度の高い世代

幸福度は年齢層によってU字型の曲線を描く傾向がある。子ども時代や思春期初期では、家族の絆が強く安心感があり、社会的責任が小さいため、幸福度は高い。

だが20~50歳前後の成人期に入ると、幸福度は低下する傾向にある。これは、仕事上の絶え間ない精神的圧力や経済的負担、人間関係や健康に対する不安が原因だ。ちょうどU字曲線がくぼむ期間となる。

ところが、50代半ば頃から幸福度は再び上昇に転じる。これは、子どもが独立し自由な時間が増えることや、年齢を重ねるにつれて視野が広くなり、生活環境を受け入れられるようになることなどが要因として挙げられるだろう。住宅ローンを完済し、貯えを持つことによって経済的な不安が和らぎ、安心感や幸福感を得ることになる。経済的に安定していれば、高齢者は趣味を追求したり、愛する人と旅行したりする自由や柔軟性が増す。株式の利益や分散投資は、年金とともに老後の安心をもたらす。予期せぬ出費にも対応できる財源があることで、幸福感は大きくなる。

1946~64年に生まれた米国の団塊の世代は現在、地球上で最も裕福だと言われている。米経済誌フォーチュンによれば、同国の団塊の世代は平均で97万ドル(約1億4700万円)~120万ドル(約1億8200万円)の純資産を持っている。
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翻訳・編集=安藤清香

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