ディズニーの子会社、ピクサーも独立した製作部門ではあるものの、深みのある魅力的な作品を生み出すことに苦戦しているようだ(例外は『ソウルフル・ワールド』で、これは必見)。
私は今年のアカデミー賞ノミネート作品、ディズニーの『マイ・エレメント』も2 回見たが、正確なあらすじをそらで説明するのは難しい。火・水・土・風という4つのエレメント(元素)が住む世界で、決して交わってはならないという異なるエレメントに出会った少女が、ともに生きることを学ぶというストーリーだったと思う。これも悪くはなかったが、似たような作品では同ディズニーの『ズートピア』の方がうまく作られている。
名作『ニモーナ』がディズニー映画だった可能性も
今年、アカデミー賞の「長編アニメーション賞」にノミネートされたのは、ディズニーの『マイ・エレメント』他、『君たちはどう生きるか』、迫力映像の『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』、友情と喪失を描いた感動作『ロボット・ドリームズ』、そして米ブログ系プラットフォームTumblr(タンブラー)に投稿されたウェブコミックを映画化した『ニモーナ』(N・D・スティーブンソン作)の全5作だ。アンナプルナ・ピクチャーズ配給の『ニモーナ』は近未来的な「中世の王国」が舞台のスリリングなファンタジーアニメで、自在に変身できる主人公の少女ニモーナは、悪びれた態度とは裏腹に内に優しさを秘めている。
そんな『ニモーナ』だが、実はディズニー映画になる可能性があった。もともと『ニモーナ』は、2019年にディズニーが買収した21世紀フォックスの子会社、ブルー・スカイ・スタジオのプロジェクトだった。そのまま行けばディズニー作品となるはずだったが、2021年にスタジオが閉鎖。プロジェクトは中止された。
『ニモーナ』にはまた、LGBTQのキャラクターがオープンに描かれている。これは、ディズニーが掲げる上辺の多様性ではなく、真の多様性だ。しかし同スタジオの元スタッフによると、 ディズニーの上層部はLGBTQ要素が大きく取り上げられていることに、非常な不快感を示していたという。