痛手を受けたのはウッズ側だけではない。同じ年に発表された論文によると、ウッズのスポンサー上位5社(アクセンチュア、ナイキ、ジレット、エレクトロニック・アーツ、ゲータレード)は、ウッズの事故前後に時価総額が2〜3%減った。
ウッズはその後、最初の新たなスポンサーを得るまでに2年ほどかかっている。ちなみに、相手の企業は日本の興和だったが、奇しくも同社は現在、大谷ともスポンサー契約を結んでいる。ウッズはこの問題で、ジャック・ニクラウスのメジャー通算18回制覇という大記録を超えるチャンスを逃したかもしれないが、収入にはあまり尾を引かなかった。現在48歳のウッズはなお世界屈指の高所得スポーツ選手であり、生涯収入は税引き前で約18億ドル(約2700億円)に達する。
ウッズの不祥事の5年前には、プロバスケットボールNBAの故コービー・ブライアントも自身のイメージ失墜の危機に直面している。当時25歳で、ドジャースと同じロサンゼルスに本拠を置くレイカーズのスター選手だったブライアントは、性的暴行の疑いで刑事訴追された。結局、訴追は取り下げられ、ブライアントは被害者とされる女性との民事訴訟も法廷外で解決している。
ただ、この疑惑のために、マクドナルドとヌテラはブライアントとのスポンサー契約の更新を見送った。ブライアントのスポンサー契約を通じた収入はその後回復し、引退時までの生涯収入は税引き前で約6億8000万ドル(現在の為替レートで約1030億円)、うちコート外の活動による収入が3億5000万ドル(同530億円)を占めている。
クライシス・コミュニケーションを専門とする企業、JAGパブリック・アフェアーズの創業者であるジョナサン・グレラは「時が味方する」と話す。「(問題が起こった)そのあとにキャリアをまっとうすることができれば、大きな助けになります。(中略)大谷はおそらくこの先、野球人生を15年続けられそうですし、それは彼にとって良い方向に働くはずです」