天の川銀河(銀河系)の中心にあるブラックホールの端から渦巻いている強い磁場による偏光を捉えた、目を見張るような最新画像が公開された。
これは、天の川銀河中心の超大質量ブラックホール「いて座A*(エースター)」の、厳密にいえば、いて座A*のシャドウ(影)の周囲にある磁場の偏光(偏波)観測によって得られた初の画像だ。
ブラックホールは、非常に大きな質量を持つ高密度の天体で、強力な重力場を持つため、光さえも外に出られない。いて座A*は、地球から約2万7000光年の距離にあるため、この画像の見かけの大きさは、月面に置いたドーナツと同じくらいだ。
今回の画像を解析・作成した、世界各国の科学者300人以上が参加する国際研究プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」は、2018年に「ブラックホール(M87*)の事象の地平面を捉えた観測史上初の画像」、2022年に「いて座A*を捉えた観測史上初の画像」といった画像化に成功している。
磁場
専門誌The Astrophysical Journal Lettersに27日付で論文として掲載されたこの最新画像を見ると、いて座A*の磁場は、M87銀河の中心にあるブラックホールの磁場と非常によく似た構造をしていることがわかる。M87は、おとめ座の方向約5400万光年の距離にある超巨大楕円銀河だ。この類似性は、次の2点を示唆している。強力な磁場があらゆるブラックホールの共通点である可能性がある点、そして、いて座A*も見えないジェットを持つことが示唆される点だ。
1974年に発見されたいて座A*は、天の川銀河の中心にある超大質量ブラックホール。直径は約3500万kmで、強力な電波源だ。
下図のように超大質量ブラックホールのM87*といて座A*の偏光画像を並べて表示すると、磁場の構造がよく似ていることがわかる。
ねじれて、整列した
今回のプロジェクトを共同で主導した、米ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのNASAアインシュタイン・フェローのサラ・イサウンは「この画像で見えているのは、天の川銀河の中心にあるブラックホールの近くに、ねじれて、整列した強力な磁場が存在することだ」と説明した。「いて座A*が、はるかに大型で強力なブラックホールのM87*に見られるのと酷似した偏光構造を持つことに加えて、整列した強力な磁場が、ブラックホールと周囲のガスや物質との相互作用の仕組みにとって極めて重要であることが、今回の研究でわかった」と、イサウンは続けた。