海洋プラスチックゴミが粉砕されて海底に沈んだり、魚が餌といっしょに取り込んでしまう海のMPsはよく知られている。WWFジャパンによれば、人は1年間に平均10万粒の海洋MPsを摂取していて、重量にすると1週間で最大約5グラム、クレジットカード1枚分にものぼるという。MPsが体内でどんな悪さをするかはよくわかっていないが、なんとなく気持ち悪い。これに空気から吸い込むAMPsが加わるとなると、気が滅入る。
しかし、AMPsを密かに回収してくれていたものがある。森林だ。木の葉には空気中の微粒子を吸着する能力があり、それが大気を浄化しているという。AMPsも吸着されていそうだが、これまで世界では研究されてこなかった。そこで日本女子大学大学院理学研究科、宮崎あかね教授らによる研究グループは、森林に囲まれた神奈川県川崎市の西生田キャンパスで、コナラの葉に吸着したAMPs量の新しい測定方法を開発し、それを実証した。
木の葉の表面には「エピクチクラワックス」というコーティング層があり、そこに微粒子が吸着する仕組みになっている。また葉の裏の毛状突起「トライコーム」も微粒子を絡め取る働きがある。そこに吸着した微粒子の量を知るには、葉を洗浄してそれを洗い落として数えるわけだが、超純水洗浄、超音波洗浄という従来の方法ではエピクチクラワックスに吸着したものを十分に落としきれない。そこで、魚や貝の生体試料のMPsの分析に用いられるアルカリ試薬を応用したところ、エピクチクラワックスが分解され、多くのAMPsが回収できた。
研究グループはこの研究結果から、日本に広く分布しているコナラ林(約3万2500平方キロメートル)で、年間約420兆個ものAMPsが捕捉されていると推定している。森林は二酸化炭素ばかりでなく、AMPsまでも吸着して人間の尻拭いをしてくれていたのだ。ただし、葉が枯れて地面に落ちれば、そこにAMPsが堆積するという問題もある。やっぱり、処理に困るゴミを無責任にまき散らすのをやめることが先決だ。
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