人間の舌には、甘味、うま味、苦味、酸味、塩味の5種類の味を感じる「味細胞」があり、その表面の味覚受容体がそれぞれの味を感知し、脳に報告して味を認識する仕組みになっている。厄介なのは、甘味やうま味の受容体は1種類なのに対して、苦味の受容体は25種類もあり、ごくわずかな苦味も感じられるという点だ。
ピーマンの苦味の元は「クエルシトリン」というポリフェノールの一種であることはわかっているが、それが25の苦味の受容体のどれに反応しているのかは不明だった。苦味は本来、毒の可能性を知らせる危険信号であり、動物に食べられたくない植物はせっせと苦味を作る。一方人間の側は、危険信号なので、ほんの少し苦いだけでも敏感に感じるようになっている。そのため、感度が高い測定器でなければ苦味を検知できないという問題があった。そこでキユーピーは、「人が感じる苦味を客観的に数値化できる計測技術」を開発し、苦味受容体の探索を実施した。
![苦味受容体を導入した細胞にクエルシトリンを投与すると、TAS2R8が強く、TAS2R38が弱く応答した。](https://images.forbesjapan.com/media/article/69972/images/editor/24298fc759617067201102e45c64279f352cfef9.jpg?w=1000)
これら受容体の応答を抑制できれば、ピーマンの苦味は低減できる。そこでキユーピーは、2016年に発表した「マヨネーズによる野菜の苦味低減効果」を、TAS2R8で検証した。実際には、マヨネーズに含まれる卵黄タンパク質の苦味低減効果だ。クエルシトリンと卵黄タンパク質の混合液をその受容体に投与したところ、応答が明らかに低下するという、マヨラーにはうれしい結果が得られた。
![クエルシトリンのみとクエルシトリンと卵黄タンパク質の混合液を投与した結果。混合液のTAS2R8の応答値が大きく下がった。](https://images.forbesjapan.com/media/article/69972/images/editor/a314514be8a1d48cc60a94957eca084925fb999d.jpg?w=1000)
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