だが、もし生命が存在すれば、木星の衛星エウロパや土星の衛星エンケラドスから放出される氷の粒子1個にも、分析機器で生命の痕跡を検出できるだけの量の物質が含まれている可能性があることが、実験に基づく最新の研究結果で明らかになった。
極めて重要なことに、今年10月に打ち上げ予定のNASAの氷衛星探査機エウロパ・クリッパーが、地球外生命体の存在を確認できる可能性があることを、今回の研究結果は意味している。
ごく少量
科学誌Science Advancesに22日付で掲載された、今回の研究をまとめた論文の筆頭執筆者で、米シアトルのワシントン大学地球宇宙科学部の博士課程修了研究者のファビアン・クレンナーは「ごく少量の細胞物質でも、探査機に搭載の質量分析計で同定できるかもしれない」と指摘する。質量分析計は、分子をイオンに変換し、このイオンに電場と磁場をかけることで、分子の構造や化学的性質を特定する分析機器だ。「海を持つ衛星に存在する可能性があるとの見方がますます強まっている、地球の生物に似た生命体を、今後搭載される観測機器を用いて検出できるというさらなる確信を、今回の結果は与えてくれる」と、クレンナーは述べている。「充血した眼球」
エウロパは、直径が約3100kmで、酸素が豊富な薄い大気と液体鉄の核を持ち、磁場がある。氷に覆われた表面には線状の亀裂が走り「充血した眼球」のように見える。厚さ約18kmの氷殻の下には、全球規模の液体水の海があり、単純な生命体が生息しているかもしれない。NASAのエウロパ・クリッパー探査機は10月10日、スペースXのファルコンヘビーロケットに搭載され、米フロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げられる予定で、2030年4月に木星系に到達する見通しだ。このミッションでは、少なくとも32回の接近フライバイ観測を実施し、4年間かけてエウロパを調査する。
NASAの探査機ジュノーは2022年、エウロパの上空わずか約350kmから写真撮影を行った。