プーチンは犯行声明を出している過激派組織イスラミックステート(IS)には言及しておらず、またウクライナの同事件への関与の否定も認めていない。その代わりにプーチンは物事を自身の筋書きどおりに進めるために今回の治安上の失態を利用している。
「うそつきの配当」で事態を混乱
約25年前、モスクワのアパートが相次いで爆破される事件が発生し、当時権力の座についたばかりだったプーチンはチェチェン人によるテロだと断定した。これについては、チェチェン侵攻への支持を集めるための偽旗作戦として、情報機関が「自作自演」した可能性があると反政府の一部の人々は主張している。ウクライナが何らかのかたちで今回の事件の背後にいる、少なくとも攻撃を支援したというプーチンの主張は、昔の筋書きから持ってきたかのようだ。「大多数のロシア人はラジオやテレビから情報を得続けている。これらの報道機関は現在、大統領府にほぼ支配されている」と話すのは米ニューヘイブン大学のマシュー・シュミット教授(国際問題、国家安全保障、政治学)だ。
シュミットは「ロシアの人々は22日に起きた事件の実行犯がISの地域組織ISIS-Kのメンバーであることをすでに知っているが、プーチン政権はウクライナ政府の一部がISIS-Kを支援していたと主張した」と指摘した。
ロシア大統領府はウクライナのゼレンスキー大統領の事件への直接的な関与は主張せず、代わりに別の人物が秘密裏に動いていたのではないかという古典的な陰謀論を展開している。