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サイエンス

2024.03.30 16:00

アリになりすます「クモ」、メリットとデメリット

樹脂に閉じ込められたアリに似たクモの化石(GEORGE POINAR JR.)

生物が生物を食べる自然界において、捕食者を避けることは創意工夫が求められる一か八かのゲームだ。そんな中、生き残るためにアリになりすますクモが存在する。

数ある生物の中で、なぜアリを真似るのだろう? アリは自らを攻撃的に身を守ることができるため、食料を探す節足動物にとって魅力が少ない。

「アリは噛む力が強いだけでなく、毒を持っており、同じ巣に住む何十匹もの仲間たちを呼び寄せることもできます」と純古生物学者のジョージ・ポイナー・ジュニアはいう。「一方、クモは化学的な防御を持たず、、単独で行動するため、大型のクモやハチ、鳥といったアリを避ける捕食者に狙われる可能性が高い。そのため、クモがアリのようになることができれば、狙われずにすむ可能性が高まります」

オレゴン州立大学統合生物学科の名誉教授であるポイナーは、映画『ジュラシック・パーク』の科学的なインスピレーションを与えた人物であり、化石化した樹脂(琥珀)の中に閉じ込められ、何本かの足の先を除き無傷で保存されていた新種のアリグモを研究した論文の主著者だ。アリに擬態するクモは世界中に生息しているが、そのほとんどが化石研究者にも発見されず、捕食者も回避してきた。本研究は、今月初めにHistorical Biology誌に掲載された。

粘度の高い樹液が固化し、化石化すると琥珀あるいは半化石状態のコパルになる。それらが固化する過程で、しばしば生物を取り込み、遠い昔への魅力的な「窓」となる。ポイナーは樹脂に捕らえられた生物の権威であり、琥珀に閉じこめられた昆虫や先史時代の花、古代の菌類、サルの血液からハチの新種まで、あらゆるものを研究してきた。

論文に書かれたクモを含んだ樹脂は、コロンビアのメデジンで採取された。コパルの塊が非常に小さかったため、アセトンや熱した針を用いる試験では、内部のクモを損傷する恐れがあったことをポイナーは指摘した。コパルは最大300万年前にさかのぼる。

しかし、保存されたクモが、いつアリになりすまそうとしていたのか正確にはわからなくとも、このコパル標本が興味深い適応行動を垣間見せてくれる希少な化石であることは間違いない。
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翻訳=高橋信夫

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