サイエンス

2024.03.30 16:00

アリになりすます「クモ」、メリットとデメリット

安井克至
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変装の達人

自然界には、他の生物を真似て捕食を回避する生物の事例が数多くあり、色を変化させて周囲に溶け込むやり方はその一例だ。しかし、足が8本で触角を持たないクモにとって、自分を6本の足と2本の長い触覚を持つアリのように見せるのはかなりの離れ業だ。

そうするために、通常アリグモは前の2本の足が触覚に見えるように位置を変える。しかし、捕食者である鳥や爬虫類、昆虫、他のクモから逃れるために必要な変身はそれだけではない。

「クモの腹部と頭胸部は密につながっているのに対して、アリに相当する部分は腹柄と呼ばれる薄い節で分けられています」とポイナーが声明でいう。「ほかにも、クモがアリによく似るために修正が必要な部位がたくさんあります」

この変身は、クモの突然変異に始まり、順応、自然選択へと進んだ結果だと多くの科学者は考えている。しかしポイナーは、それ以外にも要因があると推測する。

「クモはしばしば、同じ環境にいる特定のアリをモデルにして身体を変化させるため、クモの推理や知能も関係していると思います。その昔私たちは、昆虫の習性はすべて生来のものであると教えられてきましたが、もはやそれは当てはまりません」とポイナーはいう。

アリグモは自然界で最も優れた曲芸師の地位を得たかもしれないが、その代償は大きかったようだ。変装のために必要な策略によって、クモ自身の狩猟能力が損なわれていると別の研究は結論づけている。

アリグモの一種()

アリグモの一種(Getty Images)

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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