北米

2024.03.25 17:30

「金欠」トランプ、保有不動産を屈辱の出血大セールか

安井克至
民主党支持者の比率が高いニューヨーク市では、市民の政治的な立場もトランプが住宅を売るうえでハードルになるかもしれない。ルソーも話していたように、トランプの物件を購入しようとする人は、トランプを手助けしようとしていると白い目で見られそうだからだ。実際、ニューヨーク・タイムズ紙の最近の調査結果によれば、市内にあるトランプ・ブランドの建物のマンションは、同等のほかのマンションに比べて価格が安くなっているという。

逆に、共和党支持者が多く、2020年の大統領選でトランプが3ポイント差で勝利したフロリダ州では、比較的容易に買い手が見つかるかもしれない。トランプはフロリダ州でマールアラーゴの邸宅のほかに、パームビーチにも住宅を3軒所有しており、うち2軒は負債もない。地元の不動産会社マイルズ・ゴールドスティーン・リアル・エステートのアレクサンダー・ゴールドスティーンは、超富裕層の人たちは「何だってできる」とその購買力を強調した。

マールアラーゴの邸宅(Joe Raedle/Getty Images)

マールアラーゴの邸宅(Joe Raedle/Getty Images)

そんな彼らも、不動産を買う場合はやはり適正な価格を求めるだろう。高級不動産会社ダグラス・エリマンのフロリダ支所で働くライザ・エイブラムスは、トランプが住宅を急いで売ろうとする場合「市場価格では買ってもらえないでしょう。非常に高い割引率で売らざるを得なくなりそうです」と話した。

トランプが必要に迫られてごく短期間で不動産を売却しようとする場合、通常の売却に比べてかなり大幅な割引を強いられる可能性が高いというのは、フォーブスが取材した専門家全員の一致した見解だった。ウールソンは、確実ではないと断りつつ、ゴルフ場の場合、売却額は25〜30%割り引かれるのではないかと推測している。エイブラムによれば、物件にもよるものの住宅では割引率は最高で50%に達する可能性があるという。

一方、トランプにとって助けになるかもしれない要素も1つある。マールアラーゴやトランプタワーをはじめ、トランプが保有する一部の不動産には独自性があることだ。クリス・フェアスティーン法律事務所の不動産取引専門の弁護士、エリック・ホバーマンは「不動産のオーナーには、代えのきかない資産を所有していることに誇りを感じる方がたくさんいらっしゃいます。自分以外、誰も得られないような不動産をお持ちの方々です」と語る。

ホバーマンは、こうした人たちは「誰かが投げ売りについて話し始めると耳をそばだてます」と述べ、特別視されている貴重な不動産の買収合戦になれば、トランプはほかの場合よりは割引幅を軽減できるかもしれないとの見方を示している。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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