北米

2024.03.25 17:30

「金欠」トランプ、保有不動産を屈辱の出血大セールか

安井克至
フォーブスが各種不動産の専門家数人に尋ねたところ、結論はまとめるとこうだった。トランプが不動産を手早く売るのはどこであっても難しいだろうが、強いて言えば、うまくいく可能性が最も高いのはニューヨーク州以外のゴルフリゾートや住宅ではないかと。それには、トランプが保有する不動産のなかでもひときわ有名なものが含まれる。

トランプは米国内でゴルフ場を10カ所所有するが、いずれも抵当権を持っていない。これらのゴルフ場は合計でおよそ2億6100万ドル(約400億円)の価値がある。不動産サービス大手CBREのゴルフ場・リゾート部門のジェフ・ウールソン副会長によると、ゴルフ場の買収では普通、買収資金を多額の借り入れで賄うこともない。

ゴルフ場は富裕層の会員が自分で買い取る場合もある。そうした会員は当のゴルフ場のことをよく知っているから、通常の事務手続きの一部もスキップするかもしれない。また、ゴルフ場市場は現在、活況を呈しているので、急ぎの売却につきものの割引も抑えられる可能性がある。ニューヨーク州のレティーシャ・ジェームズ司法長官が、州内にあるトランプのゴルフ場の1つを差し押さえる可能性を示唆したことも、トランプの行動を促すかもしれない。

とはいえ、ゴルフ場の早期の売却も簡単にはいきそうにない。ウールソンも「どうやったら1週間足らずで物件を売却できるのかは、わたしもわかりません」と話していた。ゴルフ場の売却には最短でも30日はかかるという。

住宅はどうか。トランプが保有する住宅用不動産には、トランプタワーのペントハウス(最上階の部屋)、カリフォルニア州やフロリダ州、バージニア州、カリブ海のフランス領サンマルタンにある邸宅や土地、シカゴやラスベガス、ニューヨークのマンションがある。

トランプタワー(Shutterstock.com)

トランプタワー(Shutterstock.com)

高級不動産を手がけるバーンズ・インターナショナル・リアルティーのニューヨーク支所のマネジングパートナー、ヤン・ルソーによれば、このうちニューヨーク州の住宅は、たとえすべて現金で購入し、共同所有でない建物を購入する場合に通常行う詳細な調査もしない意向の買い手がいたとしても、ただちに候補から外れる。1つには、ニューヨークの不動産市場は定型の売買契約書がなかったり、法的な審査プロセスが長かったりするため「取引が進むのが遅い傾向にある」(ルソー)からだ。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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