パタゴニアの「味噌」づくり 世界最高水準のオーガニックを形に

鈴木 奈央
このようにメリットの多い不耕起栽培は、実はパタゴニアが推奨するリジェネラティブ・オーガニック認証(以下、RO認証)を取得するための大切な要素の一つである。佐藤は2021年よりパタゴニアと一緒にRO認証の取得に向けて動いている。パタゴニア プロビジョンズの大野由紀恵は、佐藤に伴走しながら収穫物を使った製品化を進めてきた。
農業機械の専門家である神戸大学農学部 庄司 浩一氏が試作した、三連の電動草刈り機。ソーラーシェアリングの電気を使用し、排ガスも出ないので環境負荷が低い。

農業機械の専門家である神戸大学農学部 庄司 浩一氏が試作した、三連の電動草刈り機。ソーラーシェアリングの電気を使用し、排ガスも出ないので環境負荷が低い。

「RO認証は、2017年にパタゴニアが複数の団体と協同でつくった、世界最高水準のオーガニック認証です。オーガニックをさらに前進させ、気候変動と戦うために土壌の健康を高めることを優先しています。取得するには『土壌の健康』『動物福祉』『労働者に対する公平性』において、厳格な基準を満たす必要があります」と大野。

『土壌の健康』には、土壌への人為的な撹乱の影響を可能な限り最小化することや輪作が挙げられ、不耕起管理は前者にあたり、佐藤の管理する畑も大豆と麦、緑肥の輪作を行なっている。

このRO認証、世界では既に100件以上が取得しているが、日本ではまだ認証された例はない。パタゴニアはここThree little birds、そして他の協同農家らとも協力し、数年内の認証実現に向けて取り組みを加速している。
千葉県匝瑳市にあるパタゴニアが投資するソーラーシェアリングの畑。Three little birdsや市民エネルギーちばが運営管理。不耕起有機栽培の取り組みでは、茨城大学農学部 小松﨑 将一氏と共同研究を進める。

千葉県匝瑳市にあるパタゴニアが投資するソーラーシェアリングの畑。Three little birdsや市民エネルギーちばが運営管理。不耕起有機栽培の取り組みでは、茨城大学農学部 小松﨑 将一氏と共同研究を進める。

Three little birdsとパタゴニアの農場の上には、ソーラーシェアリングが設置されている。ソーラーシェアリングは日本発祥の再生可能エネルギーのシステムで、農地の上で発電事業を行う。農家は農作物をつくる以外の利益を得ることができ、遮光率も農作物の植物生育に支障のないように配慮されているため、一般的な畑と同様に農作物の生産を行なうことができる。

パタゴニアはこのソーラーシェアリングを行う「市民エネルギーちば」へ投資し、関東7施設の電力をこの再生可能エネルギーを中心に賄っている。パタゴニアは、2040年までに温室効果ガス(GHG)排出量を実質的にサプライチェーンを含む事業全体でゼロ化する、ネットゼロの達成を目標としている。
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文=國府田淳 写真=西谷玖美

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