食&酒

2024.03.26

ケイト・ブランシェットが語る、英国発の日本酒「Toku」と情熱ファーストの投資戦略

ケイト・ブランシェット。2024年2月18日、英ロンドンで開催された英国アカデミー賞(BAFTA)授賞式にて(Wiktor Szymanowicz/Future Publishing via Getty Images)

セレブに最近どんなことに投資しているかを尋ねる取材を始めてもう何年にもなるが、女優ケイト・ブランシェットほど輝きを放つ人物に出会ったことはない。銀幕のスターはこのほど、小規模ながら贅沢なほどすばらしい英国発の日本酒ブランド「Toku Saké」のクリエイティブディレクターに就任した。

「ずっと酒造りに携わりたいと思っていた。もう15年くらい前からになるかな」とブランシェットは語り、Toku Sakéの共同創設者であるアンソニー・ニューマンに向かって「あなたをこっそり追いかけていたみたいな感じ」とほほ笑んだ。

TOKU SAKÉ

TOKU SAKÉ

ブランシェットは日本酒マニアを自認するが、彼女をとりこにした日本酒の魅力はその味わいにとどまらない。日本の化粧品ブランド「SK-II(エスケーツー)」のグローバルアンバサダーを務めていた期間に、日本酒の複雑な製造工程について深く知る機会を得たのだ。

SK-IIは、酒造りに欠かせない酵母や発酵に美肌を保つ秘訣があるとみて、350種類以上の酵母を入念に研究。サッカロミコプシスという酵母株にたどりつき、これを発酵させる過程で生まれた美容成分を「ピテラ」と名付け商標登録した(編集部注:現在の成分表示名は「ガラクトミセス培養液」で、サッカロミセス科ガラクトミセス属の酵母を用いている)。酒酵母の効果は高く、ベストセラーの看板商品となったフェイシャルトリートメントエッセンスにはピテラが実に90%も配合されている。

「京都で酒蔵めぐりをして、発酵のプロセスに魅了されてしまった」とブランシェットは打ち明ける。「そして、もちろんお酒にも」

それから15年が経過した。実は、ブランシェットが日本酒市場への参入を試みたのは今回が初めてではない。「以前にも同じようなことをさまざまな人たちと検討してはみた。ただ……計画が崩れたというか、崩れるほどの計画にまで至らなかったというか。とにかく実現しなかった」と彼女は明かす。

「私がこれまでに構築してきた長続きするクリエイティブな関係は、すべて自然発生的に生じたもの。Toku Sakéの際限まで日本酒にこだわる姿勢にとても感銘を受けた。私たちはまだ意気投合して間もなく、始まったばかりの関係だが、準備はととのっている。描かれている戦略も非常にスマートだ」
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翻訳・編集=荻原藤緒

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