F-16が搭載するAN/APG-66(V)2レーダーの探知距離は110kmあり、発射するAIM-120空対空ミサイルの射程も105km(編集注:AIM-120C型の数字)ほどあるとされるので、ロシア側が支配する空域にそれほど深く進入しなくても、ロシア空軍の爆撃機を攻撃できると考えられる。
AIM-120に関して最も重要なのは、いわゆる「撃ちっ放し(ファイア・アンド・フォーゲット)」能力をもつ点かもしれない。AIM-120はそれ自体に小さなレーダーを搭載するため、発射母機は発射後に誘導する必要がなく、すぐにその場を離脱できる。これに対して、ウクライナ空軍が現在用いているR-27ER空対空ミサイルはセミアクティブ・レーダー誘導型となっている。発射母機はミサイルが飛翔している間、みずからのレーダーで目標を照射し続けなくてはならないので、敵機の応射にさらされやすい。
もっとも、AIM-120を発射するF-16について「超強力な兵器」だとか、敵のミサイルに無敵だとかいう人はいないだろう。ウクライナ空軍は数週間後ないし数カ月後にF-16を実戦配備したあと、複数の機体やパイロットを失うことになるだろう。もしかすると多数のF-16やパイロットを失うかもしれない。大きな問題は、そうした犠牲を代償にしてウクライナ側が何を得るかということだ。
ウクライナ軍の指揮官たちは、ロシア軍の誘導滑空爆弾がウクライナ軍の地上部隊にもたらしている危険を本当に理解しているのであれば、F-16を積極的に運用し、大きな損害をもたらす誘導爆弾を投下しにくるロシア軍のスホーイを攻撃させなくてはならない。
フロンテリジェンス・インサイトは「KAB(編集注:誘導滑空爆弾のこと)の広範な使用がもたらす難題は今後も続く可能性が高い」との見方を示し「解決策はパイロット防空システムの追加調達・配備や、高度な空対空ミサイルを装備したF-16を通じてしか得られないかもしれない」と続けている。
(forbes.com 原文)