なぜいま日本のベンチャーが小型ロケットを開発しているのか? なぜ民間のロケット射場が和歌山に建設されたのか? 失敗したカイロスのデータ解析を待つ間に、民間がロケットを開発し、射場を建設する意義を、あらためて俯瞰してみたい。
個体燃料ロケットの強み
小型ロケットに対する需要は、いま国内でも確実に伸びつつある。そのニーズに合わせ、宇宙ベンチャーであるスペースワン社はカイロスを開発した。国内の民間ロケットとしてはMOMO3号(インターステラテクノロジーズ社)が知られているが、同機は2019年、地上100km以上とされる宇宙空間への到達に成功している。ただし、その機体は地球周回軌道には乗らず、そのまま大気圏に再突入する弾道軌道をたどった。
一方カイロスでは、小型人工衛星を地球周回軌道に投入することに挑戦した。これが成功すれば国産の民間ロケットとしては初の快挙となるはずだった。
カイロスとは、どんなロケットなのか?
カイロスは小型ロケットに大別され、その全長は18m。東大寺の大仏、またはガンダムと同じ高さだ。燃料には固体燃料を使用する。それは燃料と酸化剤が粘土状に練り込まれたもので、製造コストが安く、常温で保管できるので管理が容易だ。ただし、いちど点火したら噴射を停止することができないという性質を持つ。
これに対してH3(全長57-63m)などの大型ロケットのメインエンジンには液体燃料エンジンが使用されている。このエンジンの場合、点火してもすぐに停止でき、再点火も可能で、エンジン出力を制御しやすい。ただし、開発には高度な技術が必要とされコストもかかる。酸化剤である液体酸素はマイナス183度以下に維持する必要があり、それをリフトオフ(発射)の直前に充填するなど打ち上げにも手間がかかる。