宇宙

2024.03.24 13:00

初期宇宙のクエーサー観測で「銀河形成の謎」を探るコロンビアの天文学者たち

約130億光年の(光路)距離にあるクエーサー「ULAS J1120+0641」の想像図。中心には太陽の20億倍の質量を持つ超大質量ブラックホールがある(ESO/M. Kornmesser)

約130億光年の(光路)距離にあるクエーサー「ULAS J1120+0641」の想像図。中心には太陽の20億倍の質量を持つ超大質量ブラックホールがある(ESO/M. Kornmesser)

南米コロンビア出身の天文学者が、宇宙空間にある恒星のように見える「準恒星状天体(クエーサー)」1000個以上からの信号の分析を進めている。研究の目的は、銀河の形成でこの天体が担う役割をめぐる謎を解き明かすことだ。

強い電波を放射しているクエーサーは、銀河の中心に位置する超大質量ブラックホールに渦を巻きながら高速で落下するガスがエネルギー源となっている。一方、見かけは同じだが放射する電波が弱いクエーサーは、銀河形成の初期段階を示していると推論されている

メキシコ・グアナファト大学天文学部の博士号取得候補者のカルラ・アレハンドラ・キュティバ・アルバレスは、指導教官のロヘル・コジオルと共同で、クエーサーにおける星形成率を調べる研究を行っている。

研究チームは、可視光スペクトルで検出された1300個以上のクエーサーを対象として、米航空宇宙局(NASA)の広視野探査衛星WISEを用いて赤外線で観測を実施し、さまざまな波長域における「星形成率の変動プロセス」をより詳細に調べることを目指している。

「この研究によって、クエーサーの母銀河が、中心の超大質量ブラックホールの質量増加率に比べてどのくらいすみやかに銀河内の恒星集団を形成するかを突き止めることができる」と、キュティバ・アルバレスは説明する。「さまざまな赤方偏移における変動を比較することで、ブラックホールの形成が母銀河の形成プロセスとどのように関連しているかを明らかにすることが可能になった」

チームによるこれまでの発見のおかげで「クエーサーと呼ばれるこのすばらしく風変わりな銀河の発見と調査を疑問の余地なく適切に継続できる」と、キュティバ・アルバレスは話す。

この研究が重要なのは、宇宙が誕生したビッグバンの後に銀河がどのようにして形成されたかについて、これまでよりはるかに大きく広い視野で捉えることを可能にするからだと、キュティバ・アルバレスは指摘する。ここでは、研究の特徴や主な目的は銀河のブラックホールを調べることであり、これが「銀河の研究にとって重要かつ適切」なのだという。

約138億年前に起きたビッグバン以降の宇宙進化における重大な節目を描いたイラスト(NAOJ)

約138億年前に起きたビッグバン以降の宇宙進化における重大な節目を描いたイラスト(NAOJ)

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翻訳=河原稔

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