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2024.03.29

まち全体を実験場に──日本初の鉄道が走った高輪の地でJR東日本が挑むスタートアップエコシステムの構築

2020年春、JR山手線内で新たに開業した高輪ゲートウェイ駅。駅前では現在、大規模な工事が行われており、新たなまちが姿を現しつつある。2025年3月にまちびらきを控える、「TAKANAWA GATEWAY CITY」だ。

総延床面積約845,000㎡におよぶまち全体を日本最大規模の“実験場”ととらえ、スタートアップやアカデミアをはじめとする多様な知をもつパートナーとのコラボレーション機会の創出を目指す。さらには鉄道データをはじめとする都市OSデータの活用などにより、社会実装までをサポートするスタートアップエコシステムを構築していくという。

その一大プロジェクトを手掛けるのは、150年にわたり鉄道・都市インフラを支えてきたJR東日本だ。なぜ今、鉄道会社がまちづくりを通してスタートアップエコシステムの構築に挑戦するのか。代表取締役社長、深澤祐二に話を聞いた。


高輪に生まれる、新しいビジネス・文化の実験場

TAKANAWA GATEWAY CITY

TAKANAWA GATEWAY CITY(画像提供:JR東日本)

「100年先の心豊かなくらしのための実験場」をテーマに掲げる、JR東日本最大のまちづくり「TAKANAWA GATEWAY CITY」。まちをハブとしたスタートアップエコシステムやその中核を担うビジネス創造施設「TAKANAWA GATEWAY Link Scholars’ Hub」の構想が2024年3月に発表された。まさに、新たなイノベーションの創造拠点をつくる、壮大なプロジェクトだ。

代表取締役社長の深澤祐二は、「高輪という、イノベーションの地での挑戦にこそ意味がある」と話す。

「1872年に日本で最初の鉄道を、それも海の上に築堤を築いて走らせた地が、ここ高輪だったんです。まちづくりが始まる前は、ブルートレインなどの寝台列車を留置する車両基地として、日本の経済を支えてきました。約150年間、多くの方のくらしに密着してきた当社が、鉄道というイノベーションが生まれた地で取り組むまちづくりだからこそ、次の100年の心豊かなくらしにつながるさまざまなチャレンジを、できるだけ長いスパンで可能にする実験場にしたいと考えました。そして次の100年の心豊かなくらしづくりに向け、常に変化し、進化するまちづくりを通して、ビジネス・文化を生み出し続けるために、多様な知がかけ合わされるプラットフォームをつくろうと動き始めました」


JR東日本代表取締役社長、深澤祐二。24年4月からは会長に就任することが発表されているJR東日本代表取締役社長、深澤祐二。24年4月からは会長に就任することが発表されている

その起点としてまちに誕生するのが、ビジネス創造施設「TAKANAWA GATEWAY Link Scholars’ Hub」だ。東京大学やアジアNo.1のシンガポール国立大学といったアカデミアに加え、国内外のスタートアップ100社以上とのコラボレーションを創出する。同時に、都市OSデータの活用による検証機会、資金・法律・税務等のサポートを提供し、ビジネス・文化の種の社会実装までをサポートする構想だ。また、施設内には実証実験エリアを設置し、環境・ヘルスケア領域の基礎研究に必要な実験機器も充実させ、初期投資を抑えた活動を可能にする。

プロジェクト発足以前からスタートアップ支援に力を入れてきたJR東日本は、スタートアップを取り巻くさまざまな課題に触れてきた。なかでも、社会実装化の難しさには、トライアルの場や素早いフィードバックを得られる仕組みの不足を感じてきたという。

「起業家の皆さんは、新たなテクノロジーを活用して社会課題を解決していこうという志の高い方ばかり。でも、アイデアを実装していくための実験をする場が足りていないのです。当社が1社で所有する場を舞台にしたグリーンフィールドのまちづくりという強みを活かし、まち全体を実験の場にしていく構想が生まれたのは、スタートアップの皆様の、場を求める切実な姿に応えたいと思ったからです」

鉄道、駅、商業・ホテルなどの施設をもち、地方とのつながりも生み出すことができる。そんな、世界に類を見ないリアルのアセットを有している点も、JR東日本の大きな強みだ。

「約1,700の駅をもち、毎日の鉄道利用者は約1,500万人。それだけ多くの人が行き交うリアルの場を有しているのは世界中ほかにありません。それはつまり、世界で最もデータが取れるということ。日本だけでなく世界中のスタートアップの皆さんにとっても重要な場を提供していけると考えています。加えて、当社のSuicaをはじめとしたデータと、さまざまな共創パートナーのデータやテクノロジーを組み合わせることで、想像もできない新しいサービスを生み出せるのではないかと考えています。

東京国際空港にも好アクセスな立地を強みに、Global Gatewayとして日本各地と世界をつなぐこともできる。そんなまちだからこそ、世界中のスタートアップ企業や投資家、アカデミアを巻き込み、日本発の強力なスタートアップエコシステムを生み出していけると確信しています」

駅に直結するかたちで建設が進められているビジネス創造施設「TAKANAWA GATEWAY Link Scholars’ Hub」。同施設を有するTAKANAWA GATEWAY CITYの総延床面積は、約84万5,000㎡にもおよぶ

駅に直結するかたちで建設が進められているビジネス創造施設「TAKANAWA GATEWAY Link Scholars’ Hub」。

先人たちのフロンティアスピリットを受け継ぎ、
失敗を許容する文化を発信していく


実はまちびらきを前にして、JR東日本ではイノベーションの創出に向けた取り組みをすでに多数行っている。例えば高輪ゲートウェイ駅構内には、日本で初めて実用化された無人決済店舗システムを提供する「TOUCH TO GO」の店舗がある。人手不足の課題をどう解消できるか。JR東日本自身がスタートアップ企業との連携を形にした一例だ。ほかにも、KDDIとの協業による遠隔地間コミュニケーションサービス「空間自在ワークプレイス」や、駅でリアルとオンラインをかけ合わせた診療が受けられる「スマート健康ステーション®️」、多様化する働き方に対応し、エキナカの個室型ブースを中心として1,000カ所を超えるネットワークに広がったシェアオフィス事業「STATION WORK」を展開中だ。利用者の反応を見ながら有用性が実証されたものは、実装に向けてJR東日本グループのネットワークが活用されるという。

ほかにも、高輪ゲートウェイ駅を中心に、ロボットによるフードデリバリー(左)や透明太陽光発電窓パネル(右)など、多様なパートナーとの連携によりさまざまな実証実験が日々行われている

ほかにも、高輪ゲートウェイ駅を中心に、ロボットによるフードデリバリー(左)や透明太陽光発電窓パネル(右)など、多様なパートナーとの連携によりさまざまな実証実験が日々行われている


「長くインフラづくりに携わってきた知見を生かし、まちの土台はしっかりつくっていく。そこに、国内外の企業、アカデミアやスタートアップをはじめとした皆さんがアイデアや技術を持ち寄り集えるよう、多様性を意識しながら開発を進めてきました。コンベンションやカンファレンスの会場となる『TAKANAWA GATEWAY Convention Center』や文化創造棟を設けるほか、日本の魅力を発信するエンターテイメントイベントを開催するなど、さまざまな仕掛けを行うことで、国内外の多様な人たちが集い、共にまちづくりをしていける場にしていきます。

150年前、フロンティアスピリットをもって、『日本を良くしていこう』と先人たちがここ高輪の地に鉄道をつくったように、その原点に私たちも立ち返りたい。そして、TAKANAWA GATEWAY CITYから失敗を許容する文化を発信していきたいのです。失敗を許さない無謬性文化は、イノベーションを起こしにくい社会につながります。このまちから前向きな失敗を許容する文化を発信し、挑戦を応援していきたいですね」

世界一安全と言われる日本の鉄道事業もまた、過去の事象から真摯に学ぶことで、発展を遂げてきたという。その経験を胸に、このまちでは環境・モビリティ・ヘルスケアの3つを重点テーマとして、さまざまなトライアルを可能にしていく予定だ。

例えば、水素利活用の取り組みを推進するほか、サーキュラーエコノミーの実現に向け、スタートアップ企業や地域住民とタッグを組み、まちから出た食品、衣類、二酸化炭素などを回収・有効利用する最新技術の導入にも取り組んでいる。

1kmを超えるデッキプロムナードは、次世代モビリティのショーケースの場になる。人とロボット、モビリティとの共生により、年齢や居住地などにとらわれないくらしづくりを推進していく。

また、ヘルスケアサービスの創出に向けては、産学官を超えたコミュニケーションを生み出すためのイベントが実施される職域食堂「LINK Lounge」をはじめ、フィットネス施設、クリニック、住宅など、多様な施設が整備される予定だ。

人を中心としたネットワークづくりの“結節点”でありたい


1978年に鉄道員として働き始めた深澤の鉄道歴は45年。鉄道を取り巻く社会の変遷を第一線で見てきた。「切符切りからメンテナンスまで、すべてを人が動かしてきた」時代から、事業環境の変化、テクノロジーの進化は著しい。それでも常に「ヒト」が中心にある点は変わらないという。

「従来型の駅や鉄道起点の輸送サービスだけではなく、これからは“ヒト起点”で心豊かなくらしをつくっていくことが、私たちのミッションです。Suicaの導入により、移動履歴、購入履歴などさまざまなデータを集められるようになりました。そうしたデータの活用により、個人のニーズに沿った、より良いサービスの提供を実現できます。リアルでもバーチャルでも、“ヒト起点”のくらし、ネットワークをつくっていきたい。JR東日本とTAKANAWA GATEWAY CITYがそのための結節点でありたいと思っています」

TAKANAWA GATEWAY CITYの模型を前に、まちづくりへの思いを語る。45年前、若き鉄道マンとして国鉄に入社した深澤もまた、希望に満ちた同じ笑顔をしていたに違いない

TAKANAWA GATEWAY CITYの模型を前に、まちづくりへの思いを語る。45年前、若き鉄道マンとして国鉄に入社した深澤もまた、希望に満ちた同じ笑顔をしていたに違いない

1年後のまちびらきに向けて、東京大学との100年の産学協創協定の締結やシンガポール国立大学との連携協力、KDDIとの都市OSの整備をはじめとした共創など、さまざまなコラボレーションが続々と生まれている。また、高輪ゲートウェイ駅での地域イベントの開催、ホップを育てるコミュニティ活動など、地域連携も深まってきた。そんなまちの変化を前に、深澤は「まずは高輪ゲートウェイ駅やその周辺のまちを見に来ていただきたい」と目を輝かせる。

「駅の周辺を歩いてみると、古くから人々が生活する町があり、泉岳寺があり、生活との接点の多さに気付かされるはず。地域の方々にも気軽に参加いただく実証実験もできる好立地なんです。品川から田町まで、歩いて買い物を楽しむまちづくりもイメージでき、いろんな顔を持つエリアになっていくでしょう。来てみて、そしてぜひパートナーとしてまちづくりに“参加”していただきたい。皆さまのさまざまなアイデアをかけ合わせ、検証し、日本各地・世界中にどんどん広がっていくような、面白いまちをつくっていきたいと思っています」

次の100年、150年に向けたJR東日本の挑戦は、日本をどう変えていくのだろうか。


深澤祐二(ふかさわ・ゆうじ)◎東日本旅客鉄道(JR東日本)第6代代表取締役社長。1978年、東京大学法学部卒業後、日本国有鉄道に入社。87年、国鉄分割民営化に伴い、JR東日本に入社。2006年取締役人事部長、JR東日本総合研修センター所長を経て、08年に常務取締役就任。12年からは代表取締役副社長を務め、18年より現職。24年4月より、会長に就任予定。

Promoted by JR東日本 | text by Rumi Tanaka | photographs by Yutaro Yamaguchi | edited by Miki Chigira

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