しかし、航空宇宙技術者のロバート・ズブリンは、最新の著作『The New World on Mars: What We Can Create on the Red Planet(火星の新世界:人類は火星で何を作り出せるか)』の中で、火星はこの場所にしかできないかたちで人類の未来を象徴していると主張している。
火星探査・定住計画を推進する国際団体「火星協会」の創設者兼会長で、『マーズ・ダイレクト: NASA火星移住計画(The Case for Mars)』の著者のズブリンは今回の著作で、火星に関する他の本がほとんどできなかったことを成し遂げている。火星の植民地化という夢をいかにして実現すべきかに関する、驚くほど包括的なロードマップを提供しているのだ。
火星の入植者は当初、主として地球に持ち帰っての利用を目的とした知的財産の販売とライセンス供与によって多額の収入を得るだろうと、ズブリンは記している。火星入植者の典型的な人物像は、火星のシリコンバレーのような「メンローパーク」で共同して働く目的意識の高い人々だという。さらに「科学、商業、娯楽、医療などの目的で火星を訪れる人々は、火星植民地にとって最初から収入源になる」と、ズブリンは記している。
だが、こうした規模の経済の実現を可能にするのに先立ち、火星に最初に足を踏み入れる人々は、食料、水、居住施設などの生活必需品に重点を置く必要がある。最初の基地は、火星の永久凍土から水を抽出する技術の開発と、人の居住および工業・農業活動のための温室と加圧構造物の建設に集中すると、ズブリンは指摘する。
「火星の地下に熱水貯留層が存在する可能性は非常に高い」ため、ひとたび貯留層が見つかれば、火星入植者に豊富な水と地熱の供給源を提供できると、ズブリンは説明している。