「オープンしてまだ4カ月しかたっていないのですが、自分ではすでに前店を大きく超えている自信があります。また、美味しさは世界共通だと思っているので、日本人(私)の味覚とフランス人の味覚のレベルが違うとは思わない。目指す方向がはっきりしているから、人がどう思うかはまったく気にならないですね」と笑って答える。
残念ながら合わない人がいたとしても、好みは人それぞれ。「ご縁がなかったんですね、と思う」という言葉からも、ゆるぎない自信があることがよくわかる。
「エルブリやノーマなど、世界最高峰とされるレストランにも何回も行きました。どこも素晴らしい店ですが、彼らの料理は単純に“おいしい!”というのとはまた違います。オペラやコンサートを観ているように、レストランに滞在する一定の時間をスペクタクルなショーとして楽しませることを一番の目的としているのです。
しかし、日本人はそれだけでは満足できないんですよね。もっと真摯に“おいしい!”を追求したいのです。だから私は、フランスにおいて、フランスの素材で、技法で、その“おいしい!”を目指す料理を作ろうと思ったんです」
その結果が今のBlancの料理なのだ。
例えば、最初のコンソメは、2種の鶏を使い、低温でゆっくりゆっくり旨みだけを移していく。いわば、中華の上湯に近い発想だという。
また、魚料理として出された一皿は、「あんこうのしゃぶしゃぶ」というタイトルだが、骨や皮など不要な部位をすべて炭火焼きにし、オイルにその香りとゼラチン質の旨みを抽出したものをソースにして、羅臼昆布のだしさっと切り身をくぐらせるという、フランス料理にはない技法を用いている。
フランスのあんこうは、日本のそれより身が詰まってぐっと美味しいのだそう。それを、日本の氷詰めの手法で熟成させればもっと美味しくなる。そうした佐藤氏にしかできない料理を日々、現場で展開している。
現在の料理の方向性になったのは、コロナ禍に訪れた日本でのインプットが影響している。予約のとれないような一流店食歩と、多くの店とコラボレーションをするなかで、やはり日本の素材は難しいと感じることもあったが、多くのことを学んだという。
なかでも富山の「レヴォ」と和歌山の「ヴィラ・アイーダ」には、本当に感動したそうだ。