しかしアップルには、サムスン以上に重要な課題がある。AIはプライバシーにとって次の戦場だ。生成AIのプロンプトがハックされる可能性はすでに報告されており、今の話題は重大な侵入が起きるかどうかではなく、いつ起きるかだ。
「一部の企業はクラウドの個人情報を定期的に調べている」と先月アップルは言った。「それはユーザーの情報を収益化するためであり、アップルはやっていない。私たちは全く異なる方法を選んだ。ユーザーのセキュリティとプライバシーを優先する方法だ」。これはグーグルのクラウドサービスとアップルとの違いについて暗に示す発言と見られた。
アップルはオーストラリアで提案されたプライバシーに関する法案に対して次のように警告した。「大規模監視のためのツールには、意見表明と表現の自由、さらには民主主義全体に対するさまざまな否定的要素がある。たとえば、政府が通信プロバイダーに対してユーザーの行動を監視することを強制するかもしれないということを人々が意識すれば、合法的な結社の自由、表現の自由、政治的自由、および経済活動を阻害する深刻なリスクが高まることになる」。
このことは、クラウド対オンデバイスのAIと密接に関係がある。クラウドのAIに送られるあらゆる情報は、本質的にエンドツーエンドの暗号化ができないことを考えると特にそうだ。これは送られたデータが保存、検索され、法制度や捜査の対象になる可能性があることを意味している。たとえば、グーグルメッセージがGeminiのUIになると、Geminiに送られるデータは通常の完全暗号化の対象外になるなどが危惧されている。
オンデバイスとクラウドAIの境界線、またアップルのアプローチと他社のアプローチがどう違うかは、きわめて重要になろうとしている。ある意味で、今回のニュースは、グーグルの検索エンジンがiPhoneとAndroidの両方で強い地位を持つという現在の状況を反映しているだけとも取ることができる。しかしそれぞれの企業が開発するAIの違いについては誰もが認識しており、両者の境界線は今後曖昧になっていくだろう。アップルがサムスン、グーグルとのギャップを縮めようとしている今、状況は慎重に見極める必要がある。