日本を代表する総合アウトドアブランド『モンベル』。1975年に大阪府で創業し、独自のノウハウを詰め込んだものづくりをおこなっている。近年は軽くてコンパクトなベビー用抱っこ紐、ドッグキャリーなども開発し、アウトドアの域にとどまらないのもモンベルの強みだ。
そんなモンベルが「環境スポーツイベント」を自治体と協力して開催しているのをご存知だろうか?
海から山へ、人力だけでたどり着くことを主体とした『SEA TO SUMMIT(シートゥサミット)』。いわばアウトドア版のトライアスロンで、舞台は全国各地の自然だ。筆者は過去に3回ほど参加したことがあるが、大会そのものが開催地域の過去・現在・未来を見つめ、地域に多大なエールをおくっていると感じている。参加して終わりのスポーツイベントではなく、持続可能な〈新しいかたち〉をしているからだ。
今回は、2009年の初開催から13年間にわたり本大会に関わってきたモンベル広報部の佐藤和志さんに、『SEA TO SUMMIT』が地域にもたらす好循環について話を聞くとともに、大手アウトドアメーカーとしての揺るぎない想いを伝えたい。
ただ人を集めるだけじゃない。地域にファンを増やすための〈新しいかたち〉の環境スポーツイベント
SEA TO SUMMITは、マラソン大会などのスポーツイベントとは大きく主旨が異なっている。ただ単に人を集めて順位を競うのではなく、その土地の自然環境について知ったうえでアウトドアスポーツを楽しみ、自然の大切さについて考えるきっかけをつくる“環境”を主軸としたスポーツイベントであるからだ。「集客のために開催したいというお声もいただきますが、そもそも本大会は300名限定なので、それだったらマラソン大会をやった方がよっぽど人が来ます。我々が使っているフィールドは“自然”なので、あまり負荷をかけたくない想いがあるからです」
たくさんの人を招いて開催すれば、高い話題性と利益を得られる。けれど、海や山を舞台にしている以上、環境への負荷は避けられない。でも、その土地の素晴らしい自然を知ってほしい気持ちもある。
そこで人数を制限し、小規模であっても自然環境について関心の高い人たちに参加してもらうことに重きをおいた。
「1万人を集めて1%のリピーターをつくるより、300人で90%のリピーターをつくった方が数字的には多いじゃないですか。自然への負荷も少なく済むし、コストもそんなにかからない。1万人を呼ぼうと思ったらボランティアがたくさん必要でコストもかかる。本当に来たいと思う人に来てもらって、好きになってもらってリピーターになってほしい」
鳥取県の皆生・大山での初開催から13年。発足時からこの指針はブレていない。
今年は北海道から愛媛県まで、12大会に拡大。どの地域においても「参加者のリピーター率は50%を超えている」と、佐藤さん。単純計算で、300人中150人がリピーターになっているということになる。