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2024.03.22 09:45

愛知の「STATION Ai」国内最大の新スタートアップ支援拠点に 大企業や金融人材も迎える理由

督 あかり
──スタートアップのコミュニティ設計で心がけていることや、支援の強みはなんでしょうか。
 
愛知県の特徴のひとつが、先ほどお話した通り、既存産業が強いため、県外からメンバーになるスタートアップもさまざまな企業との繋がりに期待しており、ご紹介することは本当によくあります。
 
また、東京に比べて採用面で苦労する地域でもあり、採用支援のメニューを設けています。社会人向けの起業家支援プログラムをより充実させて、起業する人だけでなく、スタートアップで働きたい人のための場づくりもしていきたいと考えています。そこから入居企業への採用にも繋げていきたいですね。
 
開業予定の「STATION Ai」イメージ 花見スポットとして有名な名古屋・鶴舞公園に隣接する

開業予定の「STATION Ai」イメージ 花見スポットとして有名な名古屋・鶴舞公園に隣接する

──「STATION Ai」の開業に向けて、フランスにあるヨーロッパ最大のインキュベーション施設「STATION F」や海外の大学とも連携しています。海外からの企業誘致はどのように呼びかけていますか。
 
現状では海外のスタートアップは少ないですが、10社以上がメンバーになっています。グローバルデーという名称で、定期的に海外スタートアップがピッチをしたり、県内企業とマッチングしたりする事例も出てきています。
 
アメリカや中国など、愛知県が連携協定を結ぶ地域や機関が多数あるので、スタートアップの相互支援も展開していく予定です。海外から支援先のスタートアップが来日する際は、我々が受け入れて市場調査や商談の機会も設けるなど、手厚くフォローしていきたいと思います。
 
──フランスの「STATION F」は「STATION Ai」のモデルとなっていますが、そこからの学びでもっとも大きなことはなんですか。
 
私たちも施設運営のなかで、ビジネスとして安定的に収益を上げる必要があります。その時に最大のポイントはスタートアップや事業会社から継続的に人が集まるということです。ただコロナ禍を経て働き方が変わる中で、必ずしもオフィスが重要ではなくなってきました。
 
その点、「STATION F」は毎年1万社もの入居の応募があるそうです。私たちも現地で入居企業のヒアリングをしましたが、皆さん口をそろえて「場の価値」を感じていました。メタやグーグルなど、誰もが知る海外の大企業が30社程度入っています。一社あたりの入居するスペースも大きく、大企業とスタートアップの協業が前提になっています。そのため、スタートアップ側からすれば、協業先を探したり、協業期間のみ「STATION F」に足を運ぶことになります。
 
このような挑戦はしたいと思っており、大きな学びでした。つまり、それくらい本気でスタートアップと協業したい企業が国内外から集まる地域にしていかなくてはいけません。
 
愛知県はフィールドを提供するだけでなく、自ら旗振り役となり、事業機会を積極的につくっていくという珍しい行政機関だと思います。「STATION Ai」に来ると、新しい事業ができる。そんなチャンスの多いインキュベーション施設となり、地域づくりをしていきたいと考えています。
 

佐橋宏隆◎STATION Ai 代表取締役社長 兼 CEO、ソフトバンク インキュベーション事業統括部 統括部長 、SBイノベンチャー取締役。ソフトバンク入社後、人事部門を経てソフトバンクグループ社長室へ異動し、経営戦略担当としてグループの中長期戦略策定や新規事業PJに従事。東日本大震災後、SBエナジーを設立し、事業企画部長として、メガソーラーを中心とした再生可能エネルギー事業を管掌。2014年よりSBイノベンチャーにて、ソフトバンクにおける社内起業プログラムの設計・運用、および個々の事業の成長支援を統括し、5500名の社内起業家育成プログラムの構築や約100件のPJのハンズオン支援を推進。2021年9月にSTATION Aiを設立し、スタートアップ向けインキュベーション事業を開始。

文=督あかり 写真=グリフィス太田朗子

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