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フォーブスジャパン8月号より



私が爆発事故から学んだ「部下の正しい叱り方

あれは、1963年か64年のことだったかな。私はその頃、マサチューセッツ州ピッツフィールドに試験的に造られた小さな工場を任されていた。新種のプラスチック素材を開発していたんだ。本当に少人数で、私の他に数人の社員だけで実験を繰り返していた。
 
ある日、何をどうまちがえたのか、事故を起こしてしまった。工場の屋根を吹き飛ばすような大事故だったよ! 溶接機の安全弁が外れ、機械が屋根を突き抜けたんだ。工場中にガラスが飛び散ったね。幸いなことに死者は出なかった。切り傷を負った人はいたが、深刻なケガをした人はいなかった。
 
しばらくすると、私は役員だったチャーリー・リードに呼び出された。彼は、私よりもはるかに偉い立場にいた。マサチューセッツ工科大(MIT)の博士号を持つ好奇心旺盛な科学者タイプの人だったね。とにかく、その彼からニューヨークの本社に呼び出されたわけだ。クビになる―。そう覚悟を決めたよ。

ところが彼は私を座らせるなり、こう言ったんだ。
「もう一度、事故が起きたときの状況を振り返ってみようじゃないか」
 
彼は、いわゆる“ソクラテス式問答法”で一つひとつ聞いてきた。
「酸素を注入していたわけだね。どうして、もう少し慎重に作業を進められなかったのかな?」
 
ああすればよかったのでは、こうすればよかったのでは、と色々と聞かれたよ。考えてみれば、工場では揮発性が高いベンジンを使っていた。酸素を使うなら、もう少し用心しなくてはいけなかった。なのに、注意が足りなかった。その結果、ベンジンに点火し、爆発が起きた。だから本来なら、もっと確実で安全な方法で酸素を注入すべきだったのだ。
 
リードがしていたことは、すべて“問題解決”だった。「ミスをしたジャックを咎とがめてやろう」とか、そういうことではなかったよ。「過ちを振り返って、ただそうじゃないか。そして、正しいと思える解決策が見つかったら、それで前に進もう」というのが、彼のやり方だった。
 
大失敗をしでかして落ち込んでいる人には辛く当たらない―。これは私にとって大切な教訓になった。確かに、天狗になっている部下や、まちがったことをしている部下にとっては、私は厳しい上司だったかもしれない。でも、気落ちしている部下を叱り飛ばしたことはないと思う。
 
そして、もうひとつ。私はあのとき、初めて役員クラスの人間と話す機会を得た。おそらくあの事故がなければ、もう数年は彼に出会うことはなかっただろう。でも会えたことで、彼は私の人生の道標になった。そして何よりも、「落ち込んでいる人を責めることの無意味さ」を学ぶことができた。
 
結局、プラスチック素材はヒット商品になった。ビジネスとしてもホームラン級の大成功で、私のキャリアアップにもつながった。でもそれは、リードが私の失敗をただしてくれたお陰だよ。あの事故で、人とのつき合い方について多くを学ぶことができたんだ。
 
よく、上司が部下に対して理不尽に責め立てることを「ネコをいじめる」と言う。でも、本当はネコをいじめてはダメだ。失敗して気落ちした部下を追いつめてはいけないのだよ。

ベルト・マルティネス = イラストレーション フォーブス ジャパン編集部 = 翻訳

 

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