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2024.03.22

「未来を拓くイノベーションTOKYOプロジェクト」のサポートで、物流業界の人材不足に立ち向かうラピュタロボティクスの挑戦

東京都が展開する「未来を拓くイノベーション TOKYO プロジェクト」は都内ベンチャー・中小企業等が、事業会社等とのオープンイノベーションにより事業化する製品等の開発、改良、実証実験及び販路開拓を行うために必要な経費の一部を東京都が補助するとともに、事業化に向けたハンズオン支援を行う事業だ。

2020年度に採択されたラピュタロボティクスが目指すのは、ロボット技術を使った倉庫オペレーションの効率化。その現状と展望について、代表取締役CEOのモーハナラージャー・ガジャンに話を聞いた。


近年ではEコマースの需要が爆発的に拡大しており、即日での出荷をうたうオンラインショップも増加の一途をたどっている。スピード出荷を求められる倉庫内でのピッキング作業は複雑化しているが、物流業界は慢性的な人材不足に陥っているため、需要に供給が追い付いていないのが現状だ。

その倉庫オペレーションが抱える課題に、ラピュタロボティクス(以下、ラピュタ)はロボットの力でアプローチしている。

最初の衝撃は「ASIMO」だった


ガジャンが最初にインスピレーションを受けたロボットは、生まれ故郷・スリランカのテレビで見た二足歩行ロボット「ASIMO」だったという。

当時学生だった彼は、留学先に日本を選び、ASIMO研究者の後を追って東京工業大学に進学。そこで研究の道標となる人物と出会うことになる。ロボット工学の世界的権威・広瀬茂男だ。

「ロボット開発には2つのアプローチがあります。ひとつは人間型を作って、ロボットが必要な作業を万遍なく行うという考え方。世の中は人間に合わせて作られていますから、人間型ロボットは問題なく倉庫内に入っていけますが、人間型が柔軟に動き、効率的に作業するまでにはまだまだ研究開発の時間が必要です。もうひとつは、特定の作業を人間よりはるかに効率的にこなすロボットの特性を生かすという考え方。こちらのほうが早く世の中の役に立つ。当社ロボットも1台1台は人間型に比べれば特段難しい動きをしているわけではないのですが、複数台組み合わせることで効率的に動く。ASIMOに憧れていましたが、考え方は広瀬先生の影響を強く受けています」

ガジャンはサラリと話すが、「ロボットを複数台組み合わせ」なおかつ「効率的に動かす」ことは容易ではない。それを叶えるのが、「群制御」というシステムだ。

ロボットにとって人間は“不確定要素”


ラピュタが最初に市場を席捲したのは、倉庫内のピッキング作業を人と共同で行うAMR(自律走行搬送ロボット)の分野だった。かつて、倉庫内で働くロボットといえば、「A地点→B地点へ人の代わりに物を運ぶ」といったAGV(無人搬送車)が主流だった。だが、個体ごとにセンシング技術を備え、自ら移動環境の地図を作成し、人や障害物を避けて動き回るAMRの登場で、倉庫内の作業効率は飛躍的に向上した。

ラピュタPA-AMR(以下、PA-AMR)を例にみてみよう。すべての作業を人間だけで行う場合、ピッキングスタッフは作業時間の約7割を歩行や対象物を探すことに使っているといわれる。PA-AMRの場合、先回りしてピッキングする商品棚で待機し、スタッフはロボットを目掛けて移動。画面にはピッキングすべき商品と棚が表示されており、誤った商品をスキャンした際にはアラートが出る。作業が終わるとPA-AMRが、次の作業棚の地図や名称、商品をモニターに表示する。

スタッフ1人につきPA-AMR2~3台が協働作業し、次の作業場所にはすでに別のPA-AMRがスタンバイしているため、スタッフは待機時間なく常にピッキングし続けられる。人間のみの作業の場合は1日約20kmといわれる移動距離についてもPA-AMRがルートも最適化するので、スタッフの肉体的負担も軽減できるのだ。

しかし、ロボットにとって人間は「一番の不確定要素」。人間はそれぞれ歩くスピードが異なり、「トイレに行く」「他のスタッフと会話している間は作業が止まる」といった行動は、倉庫作業では日常的に起こるものだ。

人間の動きが変わったとき、あるいは人間がロボットの指示通りに動かなかったとき、どう振る舞うのか。常に起こり得るイレギュラーに対して柔軟に対応するのが、ラピュタの群制御システムだ。

「そのたびにロボットが判断不能となってシステムダウンしては意味がありません。人との共同作業を前提に作られた当社の群制御システムは、そういった外乱に対する柔軟性が非常に高く、その点も顧客から評価いただいているポイントでもあります」

PA-AMRにより、倉庫作業の生産性を2倍以上に向上させるという。

先進技術を開発し、事業成長を加速


かつてはカスタマイズから導入、サポートまですべてをラピュタが行ってきたが、事業スケールの段階になると新たな課題が出てきた。

「初期のころは業界理解・顧客理解を深化させる意味でも、導入やサポートを自社で行う必要がありました。当社の強みは技術ですが、いくら最先端の技術でも3~4年すれば他社にキャッチアップされてしまいます。私たちは常に他社の先を走らなければならない。そのために自社のエンジニアは開発に専念させたい。事業スピードの減速は、スケールの足かせになってしまうのです」

ラピュタロボティクス 代表取締役CEOのモーハナラージャー・ガジャン

ラピュタロボティクス 代表取締役CEOのモーハナラージャー・ガジャン

今ラピュタは、SIerなどのパートナー企業を巻き込むような仕組みを作るフェーズに入った、とガジャンは認識している。そのため、パートナー企業に作業を委託するためのUI(ユーザーインターフェース)の保守・メンテナンスのために必要なシステムの開発のために、「未来を拓くイノベーションTOKYOプロジェクト」を活用している。

「未来を拓くイノベーションTOKYOプロジェクト」の自由度の高さもスタートアップにとっては魅力的だという。

「例えば資金調達の場合、投資家はどうしても2~3年で結果が出るものや、売り上げに直結するようなものに投資します。『パートナー企業に委託しやすいように、シミュレーション技術を開発』することは、マイナーで数字にすぐに反映されるものではないですが、事業を長いスパンで見たときに不可欠なもの。そういった研究開発面の資金でサポートをいただけることはスタートアップにとっては本当に貴重です」

ロボットが倉庫オペレーションを変える


ラピュタはAMRの次の矢として、自動フォークリフトと自動倉庫の市場に参入し始めている。

ラピュタの自動倉庫ロボットでは、人はピッキングステーションと呼ばれる所定の位置で待っているだけで、ロボットが次々に商品の入ったビン(コンテナ)を運んでくる。スタッフがモニターの指示通りに商品をピッキング、スキャンを行い、出荷用のトレーに商品を移すと、ロボットは次の商品を取りに行く。倉庫内には、絶えず複数のロボットが自律的に走り回ってはピッキングステーションに戻ってくるため、こちらもスタッフの待機時間はない。

もう一点の強みが、ガラス入り樹脂製のモジュラーを組み合わせることで、スペースに対する柔軟性を確保していること。

ラピュタロボティクスの自動倉庫「ラピュタASRS」。小型のロボットが走行し(右)、スタッフが立つピッキングステーション(左)まで商品が入ったビンを運んでくる

ラピュタロボティクスの自動倉庫「ラピュタASRS」。小型のロボットが走行し(右)、スタッフが立つピッキングステーション(左)まで商品が入ったビンを運んでくる


「これまで自動倉庫は、倉庫を新設するときに導入するものでした。当社の自動倉庫は、既存倉庫にも導入できるのが大きな利点です。ある程度スペースを空けてもらえれば導入できるうえ、ブロック型で組み上げるので収納効率も上がり、拡張も可能。さまざまな形状や広さの倉庫にも対応できます。自動倉庫の技術やサービスは従来からありますが、既存倉庫に導入するというマーケットは未開で、可能性を秘めています。サービスインの1号案件も、従来の倉庫オペレーションを止めないままに、その一部に自動倉庫を入れるハイブリッドな導入の予定です」

グローバル展開を始めつつあるラピュタの倉庫オペレーションシステムだが、アメリカにはさらに「すごいオポチュニティがある」(ガジャン)と感じている。

「アメリカではスタッフの賃金が日本の2倍。倉庫の稼働時間においても日本では1シフトがほとんどですが、アメリカでは2シフト・3シフトが普通なので、ロボットが稼働する時間が長い。生産性向上とコストパフォーマンスの観点から、日本以上の価値を提供できるはず」

ラピュタ創業後、最初に取り組んだのは最先端ドローンの開発だったという。その技術については、今でも「(ドローンメーカー最大手の)DJIよりレベルが高くていいものだった」と自信をにじませるガジャンだが、顧客が抱える課題への理解が足りず、投資に見合う需要を掘り起こすことはできなかった。

その失敗から「技術ファースト」の考え方を改め、徹底的に課題を理解し、ソリューションを提供できる分野を求めた結果、物流業界にたどりついた。「人材不足の解決に寄与しながら3K(きつい・汚い・危険)と呼ばれる仕事をロボットで自動化し、人々がよりクリエイティブな仕事にチャレンジできる社会を実現したい」と語るガジャンの目は、理想の未来を見つめている。


未来を拓くイノベーションTOKYOプロジェクト
都内のベンチャー・中小企業等が、事業会社等とのオープンイノベーションにより事業化する革新的なプロジェクトを対象に、その経費の一部を補助することにより、大きな波及効果を持つ新たなビジネスの創出と産業の活性化を図る事業。

ラピュタロボティクス
2014年設立。「ロボットを便利で身近に」(Making robotics attainable and useful for anyone)をビジョンに掲げ、クラウドロボティクスプラットフォームの開発と、ロボットソリューションの開発・導入・運用支援を行っている。

モーハナラージャー・ガジャン◎ラピュタロボティクス代表取締役CEO。母国スリランカの高校卒業試験で優秀な成績を収め、日本文部科学省の奨学金を受賞。東京工業大学で学士号取得、スイス・チューリッヒ工科大学で博士号取得。2014年7月共同創業者と共にラピュタロボティクスを設立。

Promoted by 日本総合研究所 | text by Akiyoshi Sato | photographs by Yuichiro Yamaguchi | edited by Kaori Saeki

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