経済

2024.03.19 09:00

「ニッケル」をめぐる新たな貿易戦争、解決策はレアアース危機時の日本の対応

ニッケル鉱(Shutterstock.com)

オーストラリアの資源政策を担当するマデレイン・キング資源大臣は3月7日、米国防総省の兵器調達責任者であるビル・ラブランテ次官と会談し、米国産業のサプライヤーであるオーストラリアのニッケル産業を救う方策について話し合った。
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今後についても、米国務省のカート・キャンベル副長官との面談を含め、さらなる会談が計画されていると報道されている。

参考になる、レアアース危機時の日本の対応

今後行われる可能性がある政府介入に関して、その詳細は今のところまったく明かされていないが、米国とオーストラリアの両政府が参考にすると見られる事例がある。それは、約15年前、オーストラリアのレアアース産業を救うのにひと役買った日本の対応だ。

2010年当時、中国は日本に対するレアアースの輸出を大幅に削減し、これにより、先進的なハイテク機器を製造している日本企業が存続の危機に追い込まれた。日本政府はやむなく、資金繰りに問題を抱えていたオーストラリアのレアアース企業であるLynas Rare Earths(ライナス・レアアース)の救済に乗り出した。具体的には、鉱山の開発を完遂するための資金を提供し、将来的にレアアースの供給を受ける契約を結んだ。

こうして、ライナス・レアアースが所有するマウント・ウェルド鉱山が危機を脱し、操業を開始したことが、中国以外の地域における最大のレアアース事業の創出につながった。
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ニッケルに関しても、当時と同様の計画が練られている可能性がある。中国がいち早く原材料の確保に乗り出すなかで、西側のメーカーは、EVなどの新技術に必要な金属材料の不足に直面しているからだ。

2つの陣営がビジネスと外交の両面でぶつかり合うという複雑な状況だが、中国政府は新たな産業の推進に明確に照準を定めている。

3月に入って開催された全国人民代表大会(全人代)における政府活動報告でも、習近平国家主席のもと、戦略的新興産業や未来産業の積極的な育成に取り組む姿勢が明確に打ち出された。

これらの産業には、3つの新たな「成長エンジン」、すなわちEV、バッテリー、再生可能エネルギーが含まれる。そのどれもが、ニッケルをはじめとする金属素材を大量に使用する産業だ。

forbes.com 原文

翻訳=長谷 睦/ガリレオ

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