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2024.03.28

地域からグローバルを見すえた起業を。医療・ヘルスケアを盛り上げるアクセラレーターの挑戦

大阪最後の一等地「うめきた」で2024年9月「グラングリーン大阪」が先行まちびらきを迎える。そこで大学の研究機関や、さまざまな規模の企業が入居し、イノベーションの集積地になることを目指しているのが「JAM BASE(ジャムベース)」だ。本連載では、大阪を拠点に生まれるさまざまなイノベーションへの取材を行っている。

古くから製薬会社が集積する大阪府で、医療分野の新たなイノベーションが起きつつある。その台風の目となりそうなのが、オーストラリア発のアクセラレーター「The MedTech Actuator」だ。共同設立者のふたりに日本進出の狙いや、イノベーションの磁場としての大阪の魅力について話を聞いた。


オーストラリアに本社を置き、シンガポールに事務所を構える「The MedTech Actuator」は、医療・ヘルスケア専門のアクセラレーターだ。主に12カ月間のアクセラレーション・プログラムを運営し、2018年の設立以来、これまでに約80社の医療・ヘルスケア領域のスタートアップを支援。総額1億米ドル(約150億円)以上の資金調達につなげた実績をもつ。

共同設立者であるCEOのバズ・パルマーとCSO(最高戦略責任者)のヴィシャール・キショールは、同社の事業を立ち上げる以前はそれぞれ臨床と法律の分野で活躍していたが、パルマーは日々の研究に疑問を抱いていた。

「オーストラリア中の大学や病院に命を救う可能性のある技術がたくさんあるのに、それが製品化・サービス化されていないことを目の当たりにしてきました。この気づきが、The MedTech Actuator創設のきっかけとなったのです」(パルマー)

The MedTech Actuator CEO バズ・パルマーThe MedTech Actuator CEO バズ・パルマー

医学研究と実用領域とのギャップを埋めることができれば、より多くの人が救われるのではないか——そんな思いが、The MedTech Actuator創業の原点にはある。そして、起業から商業化までの課題を乗り越えるスタートアップ支援のプログラムをはじめることになる。パルマーが同社の理念を説明する。

「すべてのスタートアップはグローバルなビジョンと考え方をもつべきであり、エコシステムの特性を集結させれば、オーストラリア、アジア太平洋地域、そして世界中のヘルスケアのあり方を変えるスタートアップを生み出すことができると信じています」

日本企業のグローバル市場への適応を支援

日本の起業家たちがイノベーションを世界で広めるうえで、日本社会全体がリスクを回避する傾向があることが課題だとパルマーは指摘する。加えて、国内市場に集中したいという起業家の思いも、障壁となっている。キショールは、イノベーションに不可欠なグローバルの視点を早い段階から育成することで、日本企業のグローバル市場への適応を支援したいとしている。

「日本の起業家は、世界の起業家に比べて少し内気です。卓越した技術をもっていますが、その技術をプレゼンテーションすることに慣れていない。当社は、日本の起業家が技術開発のために関わりをもたなければならない、グローバルの製品市場や資本市場に順応するための手助けをしています」(キショール)

日本で医療・ヘルスケア分野の新規事業を立ち上げるには、多くの障壁がある。キショールは日本経済の特徴について、オーストラリアやシンガポールなどのように国内で大小さまざまな企業がバランス良く分散している「分散型」ではなく、有力企業とその子会社による「階層構造」になっていることを指摘する。そうした構造からの脱却を促すべく、同社は日本貿易振興機構(ジェトロ)大阪本部、大阪商工会議所、大阪産業局などの機関と連携し、「The MedTech Actuator Japan Program」を立ち上げた。

このプログラムは、医療・ヘルスケア分野で起業初期からグローバル展開を意識したスタートアップを対象に、アイデアをいかに事業化するかを焦点にあてたアクセラレーションプログラムだ。ピッチコンペティションと集中講義を行う「ORIGIN JAPAN」、具体的な製品・サービスをもつスタートアップ等を対象に、シンガポールおよびオーストラリアにおいて、現地のエコシステムを理解した上で医療機関等とのネットワーク構築機会を提供する「GLOBAL NAVIGATOR JAPAN」、The MedTech Actuatorが相談対応を行う「メンタリング」の3つのプログラムで、スタートアップの幅広い成長ステージに合わせて支援する。

キショールがその狙いを説明する。

「私たちは起業家ですから、常に実践しながら学んでいくことが基本的な姿勢です。日本の多くの団体や組織、政府機関は、『まずは可能性を研究し、そこに何が必要かを考えるべきだ』と言うでしょう。ところが私たちは逆で、何かに取り組んでみることでそこに可能性があることを学びます。イノベーションを起こすには、これ以上の方法はないと考えています」(キショール)

同社は、実地で育む起業家精神の重要性を強調。彼らが提供するプログラムでは実用的な学習に重点を置き、単なる可能性を勉強する“机上の空論”からの脱却を目指しているのだ。

地域で生まれ、グローバルに成長する

同社の主力サービスである、プレシードからシリーズAまでのアーリーステージの企業を対象としたアクセラレーション・プログラムが、「MedTech Actuator Origin Japan」として日本でも実施された。同社がこれまでに約80社に提供した経験から、このプログラムによって、支援なしでは3年かかることを1年で達成できることがわかったという。

「ピッチコンペティションや集中講義の実施など、プログラムへの参加は難易度が高く、参加後も非常に厳しいものです。その分、私たちは参加企業がグローバルで成果を生み出すための技術、チーム、資本チャネルを開拓するために全面的な支援をします」(キショール)

The MedTech Actuator CSO ヴィシャール・キショール

The MedTech Actuator CSO ヴィシャール・キショール


同プログラムは、スタートアップ企業を早期にグローバルに触れさせると同時に、地域のエコシステムの成長にも貢献するとキショールは指摘する。

「医療技術を活かした起業は、いわばグローバルを見据えたゲームのようなものです。先に日本市場を獲得してから海外に進出するのではなく、日本企業が韓国やフィリピン、あるいは米国でいきなり事業を立ち上げることは、エコシステムを構築するうえで非常に大きなメリットがあります」(キショール)

こうしたグローバルな視点が同社のイノベーションへのアプローチの礎にあり、ローカルなイノベーションとグローバルなインパクトとのギャップを埋めている。キショールは「地域で生まれ、グローバルに成長する」ことが必要だと強調する。自社の利益のためだけに投資や援助を行う一部のグローバル・アクセラレーターとは異なり、The MedTech Actuatorは、地域でのエコシステムの開発と強化に尽力。スタートアップが育成の場から摘み取られるのではなく、育てられて成長することが、やがてグローバルな舞台で影響を与えるために最善であると固く信じている。

JAM BASEがイノベーション・エコシステムのハブに

The MedTech Actuatorが日本に進出するにあたって選んだ地は、なぜ大阪だったのか。キショールは、活気のある街だからだと打ち明ける。

「この都市は卓越した能力、資産、技術、才能を有するのに十分な大きさだが、コントロールできないほど大きくはない。大阪は創造的で文化的に豊かな活気ある都市であり、イノベーション・エコシステムを機能させる芸術と創造性、スキルが混在していると感じています」(キショール)

これらの要素が繊細にバランスしている大阪の独特な空気感は、The MedTech Actuatorが物語を紡ぐうえで重要な要素となる。同社は大阪を「革新的構想を実現するための完璧な舞台」と位置づけている。文化的ダイナミズムが従来の常識を打ち破り、予期せぬことに挑み、課題をチャンスに変えるという同社の理念にピッタリ合致しているのだという。さらに大阪には、よそ者を受け入れる土壌があったとパルマーは指摘する。

「事業を成功させるには、各所との関係構築が鍵になりますが、私たちは大阪や関西全般から非常に歓迎されています。日本の行政関係者の協力は素晴らしく、私たちがこれまで関わってきた世界中の行政でトップクラスです」(パルマー)

大阪でのThe MedTech Actuatorの構想を物理的に体現するのが、現在建設中のイノベーションセンター「JAM BASE(ジャムベース)」だ。JAM BASEはスタートアップが活躍するハブとなり、思いがけない出会いにより、画期的なアイデアを生み出す場になる。パルマーが続ける。

「JAM BASEは単なるスペースではなく、コラボレーションを促進するエコシステムです。JAM BASEでは、普段は関わらないような人たちと出会うことができ、異なる価値観をもつ者同士の対話から、新たな価値づくりにつながります」(パルマー)

「奇抜で“奇想天外”なコラボレーション型のイノベーションを推進するのであれば、伝統的な組織では非常に難しい。JAM BASEは、それとは真逆の存在なのです」(キショール)

The MedTech Actuatorの大阪進出の目的は、医療とイノベーションが融合する文化を育み、技術革新が頻発するダイナミックなエコシステムを創造すること。そこから生み出される革新と成長の加速が、日本だけでなく世界中のすべての人々に恩恵をもたらすことを目指している。

同社は、大阪から、そして日本全体からイノベーションが湧き出る波を予見する。ふたりの創業者は、精密医療や免疫療法、バイオセンサー、心臓病学、高齢者医療など、日本の医療技術革新が世界をリードする未来を描く。大阪、そしてJAM BASEはそのエコシステムのハブとして、世界中から注目されるようになるに違いない。

JAM BASE
https://jam-base.com/jp/

バズ・パルマー◎The MedTech Actuator CEO。医学博士。整形外科および再生医療の経歴があり、EU、インド、アラビア湾岸、アジア太平洋地域での事業経験をもつ。2018年にThe MedTech Actuatorを共同設立。これまでに500社超のスタートアップをコンサルティングしてきた。

ヴィシャール・キショール◎The MedTech Actuator CSO(最高戦略責任者)。法律博士、M&A弁護士。ハーバード大学で博士号を取得後、保健福祉省の副長官などを歴任。政府やNGO、企業に対し、戦略や公共政策、イノベーションに関するアドバイスを定期的に行っている。

Promoted by JAM BASE | text by Seth Baldosser , Fumihiko Ohashi | photographs by Yutaro Yamaguchi | edited by Kana Homma

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