その裏には、「#緊急避妊薬を薬局でプロジェクト」の存在があった。このプロジェクトの共同代表を務めるのが、福田和子だ。
緊急避妊薬とは、性行為後72時間以内に女性が服用することで、望まない妊娠を高確率で防げる薬のこと。これまで日本では、緊急避妊薬を手にするには医師の処方箋が必要とされていた。服用が早ければ早いほど効果が高いとされているにもかかわらず、決してアクセスがいいとは言えない状況だった。
2018年に日本で避妊法や性教育の充実を訴える「#なんでないのプロジェクト」を立ち上げ、声をあげ続けてきた福田。なぜ活動を始めたのか、彼女の原点と野望を聞いた。
きっかけは「花魁」への興味
福田は幼いころから凝り性で、ひとたびミュージカル映画にハマると、同じタイトルを1日2回ずつ、1年間も見続けるような子どもだった。幼少期から海外のミュージカル映画を見ていた影響か、海外に興味を持つようになった。その中でも特に国際協力に関心を持ち、中学3年生で国際NGOに参加した。
NGOのメンバーの中で最年少だった福田は、周りの大人たちが「書道」や「経営」といった様々な専門性を生かしながら活動しているのを目の当たりにした。やはり専門性を持ってプロとして取り組むからこそできることがあると思い、自分も何らかの専門性を持ちたいと考えた。
「ただ、何を極めたいかは全然わからなかったので、後から専門を決められるICU(国際基督教大学)に入学しました。そこでいろいろなことを学ぶうちに、ジェンダーや政策に関心を持つようになったんです」
ICUでは、1年次に「遊廓」に興味を持った。きっかけは、成人式で花魁(おいらん)の衣装を着るのが流行したこと。花魁について調べていると、かつて吉原遊廓に生きた女性たちの写真などがでてきた。自分と同じくらいの年齢の人たちなのに、現代の成人式で衣装を着る人たちとは表情がまったく違い、衝撃を受けた。そこから遊廓について研究するようになった。
「私は新宿歌舞伎町のすぐ近くで生まれ育ったので、性産業が身近にありました。そうした理由もあって遊廓の研究に没頭し、吉原の跡地を巡ったり、廓で働いた女性たちの手記を読み漁ったりしました」