パナソニックは2020年、全国の社会人を対象に2020年に実施した花粉症に関する調査を実施したが(有効回答数1324)、花粉症を患う人の79パーセントが仕事に影響があると答えた。1日のうち花粉症によって労働力が落ちたと感じる時間は平均で2.8時間だった。
この平均時間、国税庁の2022年分「民間給与実態統計調査」、厚生労働省の2023年分「毎月勤労統計調査」の各データから労働力の低下を感じる社会人の平均給与を算出。それを、この調査でわかった社会人の花粉症患者の割合(53パーセント)と総務省の2023年12月分「労働力調査」のデータが示す花粉症社会人の総数を掛け合わせて経済損失額を計算したところ、約2340億円という莫大な数字になった。
どうして花粉症が労働力を低下させてしまうのか。川越耳科学研究所クリニック院長の坂田英明氏によれば、鼻づまりが続くと口呼吸になり、夜間の睡眠が妨げられ、結果として昼間のパフォーマンスが低下するためとのこと。またアレルギーによる自律神経の変調で生活リズムが乱れ、それもパフォーマンスの低下を招く。
睡眠を研究する医師、坪田聡氏も、花粉症による睡眠の質の低下を指摘している。花粉症は免疫異常のひとつ。睡眠が十分でないと免疫力が落ちるので、花粉症、睡眠の質の低下、免疫異常の悪化、花粉症のさらなる悪化という悪循環を招くという。通常8時間眠る人の睡眠時間が2時間を切ると、酒に酔ったときと同じぐらい深刻な影響があると坪田氏は言う。