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2024.03.29 11:45

東大とソニーのタッグが生み出す「クリエイティブ・フューチャリスト」とは

東京大学大学院情報学環 筧 康明

クリエイティブ・フューチャリスト。聞き慣れない言葉だが、これからの社会を変革させる、未来の社会を担う人物だと知れば、気になる方も多いだろう。そのような人物を輩出していくために東大とソニーグループがタッグを組んで設立したのが、東京大学大学院情報学環「越境的未来共創社会連携講座(Creative Futurists Initiative)」(以下CFI)である。

2月、当講座の設立を記念したシンポジウムが開催され、東京大学の林 香里(理事・副学長)、山中俊治(特別教授)、ソニーグループの北野宏明(執行役 専務 CTO)などが登壇。アート、テクノロジーおよび企業活動を通した社会課題への向き合い方や、異分野共創に関する議論を交わした。

その中で浮かび上がってきたクリエイティブ・フューチャリストの人物像について、当講座を主宰する東京大学大学院情報学環 筧 康明教授に話を聞いた。


クリエイティブ・フューチャリストとは、アート・デザイン・⼯学・人文社会学などを越境し、批評と創造の両輪で問いを炙り出し、社会に実装しながら未来を先導する人物だ。

「フューチャーリストは未来を見通すことがゴールですが、クリエイティブ・フューチャリストは動きながら未来を創っていくというイメージです。従来であれば、既存の課題に対して未来を見定め、そこへ向かっていくことが一般的でした。ところが昨今、複雑な社会環境により未来を見通すことが難しくなった。

批評的な眼差しでそもそもの問いを炙り出し、動きながら即興的に未来を創るアプローチが必要になっています。現在と未来、抽象と具体、スペキュレーションとアクションを行き来しながら、時に学問や職種を越境し、他者と共創して未来を切り拓かねばなりません」
筧の研究室の展示会「xlab Showcase 2024」で発表された作品「Immersive Flora」Youyang Hu +Cyprien R. Fol +周巧其 +Yasuaki Kakehi

筧の研究室の展示会「xlab Showcase 2024」で発表された作品「Immersive Flora」Youyang Hu +Cyprien R. Fol +Chiaochi Chou+Yasuaki Kakehi

昨今、民族紛争、気候変動、テクノロジーの劇的な進化などにより、不確実性が高く、将来の予測が困難であることは承知の通りだ。それに付随して人同士、人と自然、人とテクノロジーなど、あらゆるものの分断が進んでいる。

例えばインターネットは繋がることを志向してきたが、繋がりやすいところだけで固まり、結果的に分断を生んでしまっている。生活環境においても、住みやすさを追求してきた結果、地域間の格差が生じたり、人と自然に距離が生まれるなどの分断が見受けられる。

「私は異なるものを結び付けたり、その関係を明らかにしていくインターフェイスデザインやインタラクティブアート・デザインの研究をしてきました。例えばAとBのインタラクションをデザインする場合、まずAとBを変わらぬ要素として置いて、その間の入出力を考えることが一般的ですが、それぞれは影響し合っています。

さまざまな物事が絡み合っていく中で、人と自然、テクノロジーと人などの二項対立を超え、新しいパースペクティブが拓けるのではないかと。社会の中で繋がりにくいものを繋げたり、繋がりの中で生じる新たな問題を見つけ出しながら、複雑に絡み合う社会問題を解きほぐしたい。そのように考えています」
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文=国府田淳

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