ソニーがライブサービスの『Spider-Man』ゲームをボツにした理由

安井克至
こうしたタイトルで繰り返されている問題は、ルート(戦利品)を集めて装備・能力を強化していく「ルーター」型ライブサービスゲームの分野にスーパーヒーローのキャラクターたちを無理やりねじ込もうとしたことだ。登場するのがスパイダーマンだけのルーターゲームを作るのは、さらに難しいだろう。

ルーター要素は『Avengers』ではまったくうまくいかなかった。『スーサイド・スクワッド』は、キャラクター全員に銃を持たせるというやや強引な方法でこの問題を緩和しようとしたが、それでもうまくいかなかった。スパイダーマンのゲームでは、いったいどんな装備品を集めることになるのか? ウェブシューターだろうか? それともマスク? これもやはり、うまくはいかないだろう。ルーター要素がなければ、大半のライブゲームではプレイの目的が半減してしまう。そうなると、『Spider-Man』シリーズでおなじみのゲームプレイ(これにも限界がある)以外に、プレイヤーを引き付けられる要素はあるのだろうか?

また、プレイスタイルのバリエーションにも問題がありそうだ。複数のスパイダーマンが入り混じるゲームプレイを見るのは楽しいが、固有のスキルなどを持つスパイダーマンのタイプをいったい何種類作れるだろうか? 『Spider-Man 2』には、マイルズとピーターという2人のスパイダーマンでそれぞれ異なる動きのセットが1つずつと、さらにプレイ可能なヴェノムのキャラクター用セットが1つ用意されていた。しかしそれでも、マイルズとピーターは、それぞれのスペシャルスキル以外の動きの多くが非常に似ており、2人とも同じガジェットを使い、戦い方もとても似ているように感じられた。これが、もっと多くのスパイダーマンが登場するマルチプレイゲームとなると、どうなるのか?

そして、マネタイズ(収益化)の問題もある。プレイヤーが買いたいと思わせるコンテンツを提供しつつ、プレイヤーを怒らせないようにするには、どうすればいいのか? 『Spider-Man』シリーズの主な魅力の1つは、ゲームプレイを通じて数十種類ものスーツを集められることだ。しかしこれがライブサービスになると、収益を得るために、こうしたコンテンツが課金対象となるのはほぼ間違いない。

友人といっしょにスパイダーマンとなって乱闘バトルが繰り広げられるマルチプレイゲームというアイデアは良いものだ。だが、ライブサービスタイトルを増やして長期的な収益を得るというソニーの戦略の一環としてこれが製作されていたのであれば、『Avengers』や『スーサイド・スクワッド』と同じ運命をたどっていたであろうことは、ほぼ間違いない。

forbes.com 原文

翻訳・編集=遠藤宗生

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