新型コロナがなければ「1590万人」生きていた、平均寿命が30年ぶりに短く

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新型コロナウイルス感染症のために、2019年から2021年の間に世界の平均寿命(ゼロ歳時の平均余命)が短くなっていたことが最新の研究でわかった。

The Lancetに掲載された研究は、Global Burden of Diseaseによる研究の最新報告であり、2019年から2021年の間に世界の平均寿命が1.6年縮小したことを示している。同研究が1990年代に開始されて以来、安定して伸びてきた平均寿命が今回初めて縮小した。

「全世界の成人に関して、新型コロナウイルス感染症は、過去半世紀における戦争や自然災害を含めたどの事象よりも深刻な影響を与えている」と論文の主著者でワシントン大学健康指標科学准教授のオースティン・シューマッハー博士は語った。

研究チームは、2020年と2021年にパンデミックがなければ生きていたはずの人々が全世界で1590万人死亡したと推計した。そのうち590万人が2020年に、1000万人弱が2021年に死亡した。

しかし、パンデミックが世界中で同じように死亡率に影響を与えたわけではない。80の国々で、パンデミック期間中に死亡率が年間10万人あたり150人を超えた年があり、中でも2020年のペルー(10万人当たり413人)と2021年のブルガリア(同697.5人)が特に高かった。

「84%の国と地域でパンデミック期間中に寿命が短くなっており、新型コロナウイルスの破壊的な影響力を示している」とシューマッハー博士はいう。

しかし、レポートには良いニュースもあった。オーストラリア、ニュージーランド、中国を含めたいくつかの国で、パンデミックの早い時期に寿命が延びた。それらの国々ではパンデミック期間中の新型コロナウイルス感染者数が、世界の他の地域よりも少なかったが、それが理由であるかどうかについてレポートは言及していない。

また、小児の死亡率はパンデミック期間中も減少を続け、2021年の5歳未満児の死亡数は、2019年と比べて50万人少なかった。

本研究は、全世界の人口推移にも注目している。2021年以降、56カ国で人口が減少したが、低所得国では人口増加が続いた。世界で多くの国の人々が平均して高齢化している。2021年までの20年間に、188の国と地域で65歳以上の人口が15歳未満の人口以上の割合で増加している。

「人口増加の減速と高齢化は、今後の人口増加が医療環境の悪い貧困地域に集中していくことにともって、社会的、経済的、政治的に過去に類を見ない課題をもたらすだろう。たとえば、若年人口が縮小している地域における労働力不足や人口の急増が続く地域での資源不足などとなる。これらの問題に対処するためには、影響を受ける地域において十分に先を見越した政策をとる必要がある」とシューマッハー博士は述べている。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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