新型コロナの流行で世界の平均寿命が「1.6年短く」 当初の予想上回る

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新型コロナウイルスが世界的に大流行した最初の2年間で、世界人口の平均寿命が1.6年短くなったことが、英医学誌ランセットの研究から明らかになった。

新型ウイルスが流行し始める前、世界では70年間にわたって死亡率が着実に低下していた。ところが、同ウイルスの流行によって死亡率は増加に転じ、2019年から21年にかけて世界の死亡率は急上昇し、15歳以上の男性で22%、女性で17%上昇した。1950年から2021年の間に、世界の平均寿命は49歳から71.7歳へと全体で22.7年伸びたが、この数字は2019年から21年の間に世界全体で1.6年縮まった。

ランセットが各国の国勢調査などを基に調査した204の国と地域のうち、2019年から21年の間に平均寿命が延びたのはわずか32カ国(15.7%)にとどまった。

米国では、2020年と21年に新型ウイルスの流行がなかった場合の予想死者数より1000人当たり1.59人多く死者が出ており、世界全体の超過死亡率1.04人よりも高いことが示された。今回の調査で「高所得」に分類された37カ国の中で、超過死亡率が最も高かったのは米国で、次いで1000人当たり1.38人のイタリア、同1.33人のモナコ、同1.05人のポルトガルが続いた。地域別では日本や中国、タイ、北朝鮮を含む東アジアおよび東南アジアの超過死亡率の上昇が最も低く、1000人当たり0.24人だった。中欧、東欧、中央アジアは最も高く、同2.7人だった。

今回の研究では、2020年と21年の世界の死者数1億3100万人のうち、12.3%が新型コロナウイルスに起因する死亡だと推定されている。ここには、ウイルスの直接感染だけでなく、同ウイルスの流行にともなう社会的、経済的、行動的変化で死亡した例も含まれる。

研究著者のオースティン・シューマッハーは次のように述べた。「世界中の成人にとって、新型コロナウイルスの大流行は、紛争や自然災害を含め、過去半世紀に起きたどの出来事よりも深刻な影響を及ぼしている。このパンデミック(世界的大流行)の間、世界の84%の国と地域で平均寿命が短くなり、新種の病原体が壊滅的な影響を及ぼす可能性が示された」

2020年から21年にかけて世界の死者数全体が増加した一方で、子どもの死者数は減少した。2021年に死亡した5歳未満の数は466万人で、2019年の521万人を大幅に下回った。

ランセットの研究では、初期のパンデミックの影響に加え、世界の人口増加率が2017年以降停滞しており、新型コロナウイルスの流行でさらに急速に減少したことが明らかになった。これに加え、世界の人口は高齢化している。2000年から21年にかけて、調査対象となった188の国と地域で、65歳以上の人口が15歳未満の人口を上回る速度で増加していることが分かった。

人口構成の変化は、世界の保健にどのような影響を与えるのだろうか? 先述のシューマッハーは、人口の高齢化と健康状態の悪い貧困国の国民の増加は、労働力不足や資源不足を含め、かつてない社会的、経済的、政治的課題をもたらすだろうと警告している。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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