北米

2024.03.14 08:30

米ボーイング元社員、遺体で発見 内部告発訴訟で出廷予定日に

米ワシントン州エバレットにある工場で組み立てられるボーイング777型旅客機(Getty Images)

米ワシントン州エバレットにある工場で組み立てられるボーイング777型旅客機(Getty Images)

米航空機大手ボーイングの安全性を巡って内部告発していた元社員のジョン・バーネット(62)が9日、米サウスカロライナ州の駐車場で遺体となって発見された。バーネットはこの数日前、ボーイングを相手取った内部告発訴訟で証拠を提出していた。

この日、尋問のため出廷する予定だったバーネットは、ホテルの駐車場に止めてあったトラックの中で死亡していた。サウスカロライナ州チャールストン郡検視局によると、バーネットは「自ら負った」傷が原因で死亡し、現在地元警察が捜査中だという。

バーネットは2017年に退職するまで32年間ボーイングに勤務。うち7年間は中型旅客機787型「ドリームライナー」を製造するサウスカロライナ工場で品質管理責任者を務めていた。同社の製造過程について、バーネットは2019年、航空機の完成を急ぐあまり作業員が手抜きを迫られ、基準を満たしていない部品を航空機に取り付けることで安全性が損なわれたと内部告発した。バーネットは航空機の酸素系統の問題を発見し、飛行制御配線の近くに鋭利な金属片を見つけ、管理者に何度も懸念を伝えたが無視され、工場の別の部署に異動させられたと訴えた。

バーネットは懸念を表明したことで報復を受けたとして、退職後にボーイングを提訴。同社はバーネットの主張を否定しているが、米連邦航空局(FAA)は2017年、バーネットが訴えた安全上の懸念の一部を認めた。

バーネットは死亡前、チャールストンでボーイングに対する内部告発訴訟の取材に応じていた。バーネットはすでに正式な宣誓供述書を提出し、ボーイング側の弁護団の質問に答え、自身の弁護団による反対尋問を受けていた。バーネットは9日、さらなる尋問を受ける予定だったが、法廷には現れなかった。

ボーイングは、バーネットの死亡を知らされ「悲しみに包まれている」とし、バーネットの家族と友人に思いを寄せていると表明した。

ボーイングが製造する航空機の安全性や品質管理体制を巡っては、批判が集中している。チリを本拠地とするラタム航空が運航していたボーイング787型ドリームライナーは11日、技術的な問題により空中で突然急降下。複数の乗客が座席から放り出され、客室の天井に頭をぶつけるなど、少なくとも50人が負傷した。また、米ユナイテッド航空の日本行きボーイング777型機は先週、離陸中に脱落したタイヤが従業員用駐車場に止まっていた車に落下し、緊急着陸を余儀なくされた。1月には米アラスカ航空が運航していた小型旅客機737型「MAX9」のドアが飛行中に吹き飛んだことで、ボーイングは犯罪捜査も受けている。2018年と19年には、ボーイング737型「MAX8」2機が相次いで墜落事故を起こし、計350人近くが犠牲となっている。
SEE
ALSO

ビジネス > 経営・戦略

航空大手ボーイングが直面する「熟練工の消滅」とトラブル頻発の関係

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事