ラグジュアリーにおける「わかりやすさ」と「複雑性」とは

大阪府和泉市に拠点を置く堀田カーペットの工場

「外国人が欲しがる日本のラグジュアリーとは」
「日本が育んだ本物とは」
「世界で評価される日本的要素とは」

これらが今、「日本 ラグジュアリー」と検索すると上位に表示されるヘッドラインです。多くの団体やメディアが、外国人が何を日本らしさとして期待しているのかを語り、それを戦略的に、相手が分かるようにプレゼンテーションしていく必要性を訴えています。

たしかに、異文化間のビジネスでは、相手の文脈に沿ったシンプルで明確なコミュニケーションが不可欠です。「自分のデザインを5歳児にも分かるように説明しなさい」とは、私自身がここ欧州で、耳が痛いほど教わってきたことでもあります。

常に生産的であるためには、表現の曖昧さや抽象性は、技術不足や配慮のなさと取られます。しかし、物差しに多様性がなく、円滑で摩擦が起きない安全地帯で、果たしてこれまでの枠組みを問うことはできるのでしょうか。

これからのラグジュアリーにとって、「わかりやすさ」は敵ではないか──。それを強く実感したのが、先月最終回を迎えた今シーズンの新ラグジュアリーの講座でした。

今回、参加者には、ゲスト講師のレクチャーや他の参加者とのディスカッションを重ねながら、2つのワークに取り組んでいただきました。1つは「各自の持つ素材(事業やアイデア)を欧州に発信する想定で深めること」。そしてもう1つは「そのためのコラボレーターを国外から3人ピックアップし、コンタクトすること」。

本記事では、参加者2人の最終発表の模様を紹介しながら、新ラグジュアリーにおける「わかりやすさ」との向き合い方について、考えてみたいと思います。

一眼で捉えられない複雑性

参加者の1人、堀田将矢さんは、大阪府和泉市に拠点を置く、1962年創業のカーペットメーカー「堀田カーペット」の3代目です。「カーペットを日本の文化にする!」をビジョンに掲げながら、カーペットのある暮らしの価値を普及する活動に取り組んでいます。


最終発表では、ご自身の考えるラグジュアリーを「『哲学』と『学び』の一貫性」と「『文化』と『デザイン』の複雑性」という言葉で表現していました。

「自分がこれまで魅了されてきたモノや場所を振り返ると、そこにはいつも、一眼で捉えられない複雑性があった。講座を経て、これがラグジュアリーではないかと思うようになった」
現在施工中の施設「CARPETROOM BASE」

現在施工中の施設「CARPETLIFE BASE」

そう語る堀田さんは、現在施工中の施設「CARPETLIFE BASE」で、この“複雑性”を表現していくといいます。
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文=前澤知美(前半)、安西洋之(後半)

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